NHKニュース7 (ニュース)
年収の壁の見直しなど、来年度の税制改正を巡り、自民党、公明党両党は、国民民主党との協議を始めた。きょうの協議は、税制調査会長が出席して、それぞれ個別に行われた。そして「年収103万円の壁」の見直しなどの具体的な議論は、来週、3党がそろって協議を行うことを確認した。一方、立憲民主党も税制調査会の会合を開き、年収103万円の壁について、専門家から意見を聞いた。
年収の主な壁は103万、106万、130万の3つ。106万と130万の壁は社会保険料の壁ともいわれている。勤務先の規模や働く時間によっては、公的年金や健康保険など、社会保険料の負担が生じるため。税金や社会保険料を支払うことになると、手取りが減る可能性がある、だから、年収がこの額を超えないようにしようと、パートやアルバイトの人たちが働く時間を調整する、いわゆる働き控えも起きている。総務省の調査によると、パートやアルバイトなどで働く人で、こ働き控え就業調整をしている人は、いずれも推計で年収50万円以上99万円以下の人が259万人、年収100万円以上149万円以下の人が186万人に上っている。このように、さまざまな年収の壁があるが、国民民主党が主張しているのが103万円の壁の見直し。具体的には所得税の基礎控除などの額を現在より75万円引き上げて、178万円にするよう求めている。引き上げ幅について、国民民主党は、東京都の最低賃金の上昇幅をもとにしたと説明している。所得税の基礎控除は働く多くの人に関わり、控除が引き上げられると減税の効果は働く人に広く及ぶことになる。大和総研の試算では、年収200万円では8万2000円、年収800万円で22万8000円の減税となる。つまり年収が多い人のほうが、減税額が大きくなる形となっている。野村総合研究所・エグゼクティブエコノミスト・木内登英は「一律、基礎控除を引き上げると高い税率の高所得者層に減税の恩恵がいく。格差を拡大させてしまう」とコメント。
「年収103万円の壁」の見直し。もう一つの焦点が税収の減少。政府は、控除額を178万円に引き上げた場合、国と地方の税収が合わせて7兆円から8兆円減ると試算している。このうち地方税の個人住民税は、4兆円程度の減収になるという見通しが示されている。全国知事会会長・宮城県・村井知事は「財源的に大きな穴があくことがあってはならない。妥協点として国債を発行し借金のツケを後世に回して子どもたちの借金にしながら減税することは止めてほしい」、第一生命経済研究所・星野卓也主席エコノミストは「食料品などの物価指数に合わせると130万円〜140万円までの引き上げは出来る範囲では。税制だけ見直しても社会保障も合わせて考える必要がある」とコメント。