THE TIME, TIMEマーケティング部
本屋大賞の裏側を三宅香帆が取材。授賞式の会場はセッティングから受付、司会も書店員。今回、大賞を受賞した「カフネ」は美味しい手料理が悩める人々を優しく癒やす物語。最愛の弟を亡くした主人公が弟の恋人だった料理人に誘われ、家事代行サービスに参加。食を通して心を通わせていく。その緻密な料理描写で再現レシピも話題。ノミネート後は爆発的に売れ、既に32万部を突破した。数ある日本の文学賞の中で最も売上が見込めるのが本屋大賞。去年の受賞作「成瀬は天下を取りにいく」は、続編と合わせ100万分を超えた。現在書店が1日1店のペースで減っている中、熱量を増す本屋大賞。なぜ必ず売れるのか、本の良さを知る書店員にしか出来ない戦略と固い結束があった。
約20年前、本屋大賞が作られたきっかけは書店員の怒りだった。直木賞なしの決定に全国の書店員から納得出来ない声が上がった。第1回の本屋大賞「博士の愛した数式」は大ヒット。1か月前から大賞を決めて出版社に連絡し全国の店舗で大量スタンバイすることで、発表されると同時に一気に店頭に並べることができ、不足することがない。ノミネート作品も全国の本屋で働く書店員やアルバイトが選ぶ。ノミネート作品の「死んだ山田と教室」は、事故死したクラスメイトが教室のスピーカーから声で蘇る物語。「禁忌の子」は身元不明の遺体が自分と同じ顔をしていた幕開け。ノミネート作品は2か月以上、目立つところに売り場が設置される。