時論公論 (時論公論)
5月にライシ前大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡したことを受け、大統領選挙が行われた。選挙にあたっては「イラン護憲評議会」による資格審査があり、最高指導者の意向が強く反映される。そのため、保守強硬派から選ばれる可能性が高いとみられていた。今回、80人が立候補を申請し、認められたのは6人。うち5人は保守強硬派。唯一の改革派、ペゼシュキアン氏は経済再建には欧米との交渉で「イラン核合意」を立て直し、経済制裁の解除実現が不可欠と訴え、当選を果たした。ただ、大統領はNo.1に過ぎず、最高指導者はハメネイ師。重要事項を決めるのは最高指導者な上、議会では保守強硬派が多数を占めるなど、ペゼシュキアン氏の権力基盤は強固ではない。また、大統領選挙を控えるアメリカでは当面、制裁解除はしないとみられ、選挙でトランプ氏が返り咲けば、核合意は崩壊しかねない。日本を含む国際社会は新政権が開こうとする対話の窓が閉ざされないよう、イラン国内の権力構造に注意を払い、大規模な衝突を回避する姿勢が求められる。