モーサテ なるほど・ザ・新興国
現地に駐在するビジネスパーソンだからこそ知る生の情報を紹介。きょうはインドのJBIC国際協力銀行・ユーデリー駐在員事務所の栗原さんに話を伺う。先日、インドでは大気汚染が深刻化しているとの報道があったが、その件について聞くと栗原さんは「農家による野焼きやヒンドゥー教の祭りで使用される大量の爆竹・花火などの影響でこの時期は大気汚染が深刻。ニューデリーは盆地で空気が滞留して雨もふらないためなかなか改善されず外出時にはマスクが欠かせない。春が来る2月ごろまでは続く見込み」と話した。インドの人口が中国を抜き世界一になるなど注目を集めているが、栗原さんは「インドのGDP成長率は2021年度9.1%、22年度7.2%、27年度予想は6.3%と順調な成長を見せている。政府の2023年度予算案も前年度比14%増、インフラ予算に限ると前年度比33%増と”さすが成長国”という勢い」などと話した。
きょうのテーマは「北インドの州はチャンスの宝庫」。栗原さんは「インドは連邦制で歴史的経緯もあり、外交・軍事部門では中央集権的だが、産業やインフラは州政府に強い権限を与えている。そのためインドに進出する場合はどの州を選択するかが重要。きょうはインドの北側に位置する魅力的な州を紹介する。まずは首都・デリーを中心とするデリー首都圏。デリーNCRを囲むようにハリヤナ州・ウッタルプラデシュ州が隣接している。ハリヤナ州はデリーから車で1時間ほどのグルガオンという高層ビルが建ち並ぶ大都市が急ピッチで開発され、日系企業の多くが拠点を構えている。ハリヤナ州はMARUTI SUZUKIの工場をはじめ隣接するラージャスターン州も含め、多くの日系メーカーが進出しているので、日本食レストランも多く日本人が多く住んでいる。ウッタルプラデシュ州には2億5,000万人が住んでおり、インドで人口の一番多い州。州内で最も注目されているのはデリー近郊にあるノイダという大開発地域。来年開業されるインド最大級の新空港を中心にインドの各地をつなぐ鉄道・高速道路など様々な交通体系を連結させたマルチモーダルハブとしての開発が進んでいる。マイクロソフトや韓国のサムスン・LGも大拠点を構えている。この州は政治・外交の観点でも重要。規模の大きさからウッタルプラデシュ州での政治・選挙の経験はインド首相への登竜門とされている。現在の州首相はヨギ・アディティヤナートというヒンズー教の僧侶。州の経済成長への貢献から次期首相という声がある」などと話した。
栗原さんはもう一つの注目州に北インドの西側に位置するマハラシュトラ州とグジャラート州を挙げ、「この2つの州だけでインドのGDPの23%を占めるビジネスの一代集積地。しかし両州合わせて日本人は1,000人もいない地域で、日系企業にとってはまだ開拓の余地がある。マハラシュトラ州にはビジネスと金融の中心・ムンバイがある。日本では映画の『スラムドッグ・ミリオネア』をイメージする人も多いと思うが、あれから15年が経ちインフラや高級ショッピングモール・マンションが次々開発され、いまや欧米やインドのエグゼクティブが居住する大都会に変貌している。マハラシュトラ州伝統的ものづくりの拠点も多く、工業生産額はインド全体の約2割を占めている。グジャラート州はモディ首相の出身州で、外資ビジネスの誘致に熱心。すでにスズキも進出している。いまグジャラート州で最もホットな話題は半導体。アメリカのマイクロンが州内最大都市・アーメダバードに半導体パッケージング工場の建設を決め、新たなハイテク拠点として注目が集まっている。アーメダバード周辺には中央政府が手掛けるハイテク団地・ドレラ特別投資区があり、半導体の前工程やディズプレイ工場の進出も計画されている。半導体サプライチェーンのビジネス機会も含め、これからハイテク面に強い日系企業の投資機会も出てくると思う。来年1月10日からはモディ首相肝いりの国際ビジネスの見本市『バイブラント・グジャラート』が5年ぶりに開催予定」などと話した。