NHKニュース おはよう日本 (関東甲信越のニュース)
日本伝統の手すき和紙。作る際、「ねり」とよばれる粘液を混ぜ、繊維が広がるよう促す。「ねり」の原料はトロロアオイという植物の芽。しかし栽培の難しさや農家の減少などのため、生産量が減り、和紙づくりでの懸念となっている。今、その課題をサボテンで解決しようと矢端亀久男さんと倉林輝生さんが取り組んでいる。2人は30年来のサボテン仲間。4年ほど前、矢端さんはトロロアオイの生産減少について初めて知った。矢端さんは自分が育ててる植物を役に立てたいと倉林さんを誘って和紙職人の谷野裕子さんに協力を仰いだ。谷野さんはかつてインドネシアで紙作りをしたときに、サボテンの一種、月下美人で「ねり」を作った経験があった。そこで倉林さんの発案でウチワサボテンを使って「ねり」作りを試すことにした。粘液が良く出て、トゲが少なく、栽培も簡単という理由から。谷野さんが加工すると、たくさんの粘液が出てきたが、小さなトゲが隠れていたため手がチクチクするという問題が発生した。トゲをどう取り除くか、谷野さんは市販されてる野菜のヘタ取り器を使うことで解決した。試作を始めて2年以上かけて完成したサボテンの「ねり」。実際に紙をすいてみた。さらに試作を通じて谷野さんはサボテンの「ねり」ならではの良さに気付いた。トロロアオイの「ねり」は気温があがると粘りが弱まるが、サボテンの「ねり」に変化はなかった。今後矢端さんと倉林さんは谷野さんと協力しながらサボテンの「ねり」を使った紙の品質を調べ、本格的な実用化を目指している。この和紙はすでに群馬県内の陸上競技大会で表彰状として使われたほか、名刺などに活用してるという。