新プロジェクトX〜挑戦者たち〜 プノンペンの奇跡〜希望の水道 国境を越えた絆〜
水道管を破壊し尽くさんばかりに広がる盗水。止めるには地道に犯罪の証拠をつかみ警察に通報するしかない。しかし内戦で使われた銃をいまだに隠し持つ市民もいる。盗水の摘発で逆恨みされれば命の保証はない。この時プノンペンにいたのは2度目の派遣となった久保田だった。カンボジアの職員は盗水の摘発に総力をあげた。
一方の久保田はデータ解析に専念。ある日奇妙なグラフに気付いた。水の使用量を表すグラフをよく見ると深夜2時間おきに30トンもの水が使われていた。ふと日本で似た波形を見たことを思い出した。火災の鎮火のため消火栓を利用した時の波形だった。しかしこの日プノンペンで火災は起きていない。とすると。現場で張り込みが始まった。3日目、タンクローリーが横付けし消火栓から水を吸い上げ始めた。水道網が整わないカンボジアでは水が届かない地域に盗んだ水を売りさばく犯罪者たちがいた。警察、弁護士の力を借りてこの犯罪者たちを完全におさえ込んでいった。そして久保田は最後の課題に向かった。「水質を改善して飲める水道水に挑戦しませんか」。水道水をそのまま飲める国は世界でも一握りでハードルは極めて高い。上司の森は既に動いていた。人脈を生かし援軍を呼んでいた。水質の研究に優れる横浜市水道局の専門家である。彼らの協力を得て水源となる川の微生物や有害物質の種類を調べ上げていた。分析結果をもとにどんな薬剤をどれくらい入れるべきか水質改善の方法を確立していった。
2004年7月、プノンペンの職員が浄化した水が横浜の試験場に運ばれた。日本の水質基準50項目をすべてクリア。自信を持って飲める水と言える数字だった。プロジェクト開始から今年で25年、プノンペンの人口は200万を超えた。水道網も広がり続けている。この日も郊外の貧しい村に水道が開通。かつてアジア最低といわれた水道の劇的な改善は「プノンペンの奇跡」といわれる。水道の水質が日本の基準をクリアしたことをメンバーは「流しそうめん」で祝った。