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今月20日に誕生する第2次トランプ政権。トランプ氏が新設する政府効率化省のトップに就任予定のイーロン・マスク氏の言動がヨーロッパで波紋を広げている。英フィナンシャル・タイムズは、イギリスの野党・リフォームUKに対してマスク氏が巨額の献金を検討し、首相の交代を画策していると報じている。ドイツでは来月総選挙が控えているが、マスク氏はドイツ・ショルツ首相についてXで「無能なバカ」などと投稿した。一方で野党・ドイツのための選択肢(AfD)のワイデル共同党首とXでオンラインの対談を行い、その中で同党に投票するよう呼びかけを行った。米政権の要職に就く人物がヨーロッパの政治に介入するというのは異例で、そうした動きを受けてフランスなどはこうした干渉を阻止するためマスク氏に厳しく対峙すべきではないかといった声を上げている。イギリスのケースもドイツのケースもいずれも右派の政党で、ドイツ・AfDは移民の排斥やウクライナへの武器支援に反対をしている。この政党の一部の議員の中にはドイツの当局から右派過激派と指定されている議員もいる。
マスク氏がヨーロッパの右派を支持する狙いについて中林美恵子氏は「アメリカの利益」と「マスクの利益」を挙げている。トランプ氏は米国産のエネルギーなどをヨーロッパ諸国にもっと買ってもらいたいと明確に言っている。米国とEUは米国の貿易赤字となっていて、トランプ氏はエネルギーを買ってもらうことによって貿易赤字を解消したいとしている。マスク氏はその意向を汲んだ動きを見せている。マスク氏が支持している自国第一主義的な右派の政党が各国で政権を取ると、各国がそれぞれ自国第一の動きをするということになる。そうなるとEUとしては足並みがバラバラになり、米国からすると各国と個別に交渉がしやすくなって有利に話が進んでいくという見方を中林氏はしている。またEUではデジタルサービス法があり、SNS大手に対して有害なコンテンツなどの排除を義務付けている。こうした中でEUはマスク氏が率いるXを法律違反の疑いで調査しており、違反が認定されるとヨーロッパだけでなく世界の売上高の最大6%が罰金の対象になる可能性がある。そのためマスク氏はトランプ政権を後ろ盾にEUの規制を回避することで、ヨーロッパでのXの価値を高めていきたい狙いがあるのではないかと中林氏は分析している。