新美の巨人たち 新美の巨人たち
もっとも力を注いだのは伝統的な教会建築と日本的なモダンさとその両立。聖堂の中は、側廊のアーチがいかにもな教会らしい雰囲気を醸し出している。しかし細部をみていくと祭壇の背景にあるステンドグラスは日本の伝統的な梅の花の文様があり、地下聖堂の壁も五弁の花が。窓には丸を横に重ねた州浜と呼ばれるデザインが元になっている。村野は日本の伝統をモダンにアレンジしいたるところに散りばめている。もっとも日本的なものに、村野は平等院鳳凰堂にあるような鳳凰をつけたいと言い出し、その飾りをとりつけたが不死鳥のように広島を復興していこうという象徴としてつけたかったもの。さらに村野のこだわりは聖堂の階段の手すり。手を触れる部分への細かい気配りがされている。洗礼堂の格子戸は、面取りを施して柔らかな手触りに。見えない部分にもこだわり、美しさは細部に宿るが建築家・村野藤吾の教示だった。