テレメンタリー2023 再始動 ~記憶を記録に~
フィリピンのリナパカン島は首都マニラからプロペラ機とボートで5時間ほどの場所にある小さな島。道路は整備されておらず、電気もほとんど通っていない。この島に住むウエハラ・パムフィラさん(85)は日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。妹・トミコさん(83)&トヨコさん(79)と一緒に暮らしている。戦前のフィリピンには多くの日本人が移住し、最盛期には3万人が暮らしていた。日本軍がアメリカの統治下にあったフィリピンに侵攻したことで在留日本人はフィリピン人からも恨まれることになったという。ウエムラさんの父はトラックに連れて行かれ、戻って来なかった。戦後も激しい反日感情が続き、ウエハラさん姉妹は小学校しか通えず貧困に苦しんだ。当時のフィリピンは子どもは父の国籍に属すると決まっており、ウエハラさん姉妹は無国籍の残留日本人となってしまった。NPO法人「フィリピン日系人リーガルサポートセンター」は無国籍となってしまった残留日本人を調査している。無国籍の残留日本人2世モリネ・リディアさん(80)は迫害を逃れるために日本人であることを隠して生きてきたという。父は「カマタ モリネ」で沖縄出身だというので調査したところ、沖縄の「盛根蒲太」という男性の渡航記録が見つかったが、親子関係を証明できるものが必要だという。
フィリピン・ダバオで日系人の総会が開かれ、無国籍の2世も6人が参加した。カナシロ・ロサ(日本名マサコ)さん(80)は理髪師だった父が日本軍に徴用され戻らなかったという。NPOの調査開始から20年が経ち、308人が日本国籍を回復した。日系2世の寺岡カルロスさん(93)は戦争で家族5人を失った。母・弟・妹は米軍機の爆撃で死亡。次兄はフィリピンゲリラに殺害され、長兄は日本軍にスパイ疑惑で銃殺された。寺岡さんは無国籍の日本人たちを一括で救ってほしいと日本政府に訴えてきた。コロナ禍で調査が困難になり、4年前に1069人だった「無国籍」2世は最新の調査で493人に減少した。NPOは無国籍の2人を日本に招いて親族探しをしてもうらためクラウドファンディングを実施。1人は先ほど登場したカナシロさん。もう1人はアカヒジ・サムエルさん。沖縄のアカヒジ(赤比地)姓をルーツに持つ人たちが集まり調査に協力してくれた。カナシロさんの調査にも進展が見られ、2人は12月に来日した。カナシロさんの父とみられる幸正さんの親族、アカヒジさんの父とみられる勲さんの親族が空港で出迎えた。2人は父親の身元を証明する記録を集め、日本国籍回復を目指す。