モーサテ プロの眼
ナウキャスト創業者・取締役の渡辺努氏が解説。参議院選挙では消費税減税について、全品目を対象にするのか、食品だけにするのか、期間的にも一時的なのか、撤廃するのかなど、いろんな議論が出ていた。ここまでの議論は財源論に集中しており、消費税減税の効果や本当に消費者が得するかという議論が一切なかった。課税前の価格を消費税減税のタイミングで販売側が引き上げることがあり得る。減税の恩恵は消費者側に完全には行かず、販売側に多く流れていくことになる。日本ではまだ消費税を減税したことがない。ヨーロッパはいろんな折に消費税を引き下げており、その研究は進んでいる。フィンランドにおける美容サービスの減税が価格に及ぼした影響を見ると、上げるときと下げるときで非対称になっており、引き下げ時の転嫁率が極端に低いことがわかる。主要な欧州の国々のデータで見ても非対称性は確認されている。「消費税減税で消費者が得をする」という構図は、必ずしもそうではないというのが大事な事実。消費税減税で価格転嫁が不十分な場合、役所や政府が価格のモニタリングを行ったり行政指導や勧告をするなど、コストとして付随的に発生する。消費税減税は企業にプライシングを委ねる部分が残っており、政府や政治家がやりたいことがそのまま実現する具合にはなっていない。