報道ステーション (ニュース)
富山市に暮らす村山和弘さんは生活保護の減額の取り消しを求める裁判で戦う原告の1人。生活保護費と年金が頼りの生活だが、今から10年ほど前に国は段階的に支給額を減らし、村山さんにとっては月に5400円の減少となった。きょう最高裁が言い渡した判決は、生活保護費の引き下げは違法として減額の取り消しを命じるものだった。支給額引き下げのきっかけとなったのはリーマンショックで、世界的な経済危機で失職者が続出し受給者が急増した。それと同時に広がったのが生活保護バッシングで、当時野党だった自民党は不正受給への非難を展開し、生活保護費の1割カットを公約に掲げて2012年の総選挙に臨んだ。そして政権に返り咲くと、その後生活保護費を減額していった。引き下げの根拠とされたのが当時のデフレ状況だった。今回裁判で焦点となったのは物価の下落率が引き下げの指標となったことと下落率の計算方法だった。総務省が発表した下落率が2.35%だったのに対し、厚労省は独自に4.78%と倍の下落率を算定し、この数字をもとに支給額を引き下げた。きょうの裁判で最高裁は厚労大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱や乱用があり違法とした。全国各地で起こされた同様の訴訟では高裁判決の出ている12件のうち7件は引き下げを違法として取り消しを求めたが、一方で5件は原告側の訴えを退けるなど判断が割れていた。判決では国に賠償を求める訴えは退けられたが、原告側は減額分を遡って支払うよう求めていて、国の対応が今後の焦点となる。