脱炭素の切り札”地熱アポロ計画”

2024年7月6日放送 10:38 - 10:52 テレビ東京
ブレイクスルー (ブレイクスルー)

小説家・真山仁が産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター・浅沼宏に話を聞く。データの解析室では、臨界地熱に関する様々なデータの解析を行っている。地熱地帯では人間が感じないような微小地震が起こりその解析を行っている。どういうところに流体や熱水がありそうかが分かってくるという。地熱資源の探査でよく用いられる地価の電気抵抗の測定では、電気が流れやすい所は岩石の中に水が多くあるところになり、超臨界地熱貯留層の可能性が高くなる。AIを使ってこれまで分からなかった情報を取り出そうというアプローチもしている。こうした調査を組み合わせ、超臨界地熱発電に最適な場所が岩手・葛根田地域の地中にあると発見。葛根田地熱発電所は1978年に運転開始、この地中に巨大エネルギーがあるという。浅沼氏は「失敗の可能性は極めて低い」と発言。
超臨界地熱実現への大きな壁は「極限の温度と圧力」。アイスランドでも2009年に高温の地熱資源を狙って穴を1本掘っている。しかし、事前調査が不十分で1200℃のマグマに突っ込んだ。さらに地下4500mまで掘削したところ、450℃の高濃度塩酸が噴出した。摂氏500℃、気圧140倍のため従来の装備では耐えられない。このため浅沼氏らは新開発の部品を開発している。素材にはシリコンカーバイドを使用している。これは、非常に密度が高く原子炉の圧力容器に使われた素材。温度や圧力が高いため今の技術では到達できないことは分かっている。コストについて経済産業省から「普通の発電と同じくらい」と言われているという。
アイスランドでは国家プロジェクトとして超臨界地熱の開発を行っている。米国・エネルギー省は2050年までに原発120基相当(最大1億2000万kW)の地熱発電を計画している。脱炭素を進めるIT企業「Google」が地熱発電を開始した。AIの普及で使用電力が急増するデータセンターに安定電力を供給する狙いがある。日本の超臨界地熱発電の候補地は4カ所(八幡平、葛根田、湯沢南部、九重)。2040の試験運転を目指している。日本の課題は「長期開発の投資リスク」。開発期間は約10年、試掘には約100億円確保しなければならない。発電所を作る費用は約1000億円、原発よりは安いという。インドネシアでは国の後押しで民間企業の地熱発電への参入を活発にした。インドネシアの地熱発電(設備容量)が2010年からの10年間で倍増。発電量は世界2位に躍り出ている。
インドネシアでは2014年に地熱法を改正。国立公園内の発電所建設などの規制を緩和した。日本の壁は「法律と規制」。日本には地熱に特化した法律がなく規制も多い。国立公園は基本的には人が入ってはいけないエリアがあるが、そういう所に地熱のすごく良い貯留層がある。先進諸国では、地熱法があるが日本は整備されていない。一応、国会議員の超党派議連があり地熱法を作ろうという動きはある。浅沼氏が地熱にこだわるきっかけは「大学時代、仙台市の地下に2kgの岩があり熱を取ったら日本中の電力を賄えると聞いた」こと。浅沼氏は東北大学の教授として世界各地で地熱発電を研究。13年前に原発事故が発生、政府のエネルギー政策の大転換で人生が激変したという。2013年、地熱発電のプロとして産総研へ。監督官庁である経産省に挨拶に行った際に「あなたのミッションは発電すること」と言われ反省したという。日本の使命として脱炭素化も図らなければならないなどと考えた時に、わが国で自給できるエネルギーは最大限利用できるようにしよう、お互いの欠点をみんなで補っていかないとエネルギーの問題は解決しないなどと話した。


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