選挙戦はどう変わる/”ハリス氏指名”でどう変わる/トランプ氏は 銃撃事件は/選挙戦の争点は

2024年7月28日放送 9:08 - 9:42 NHK総合
日曜討論 (オープニング)

カマラ・ハリス氏はカリフォルニア州出身で母親はインド出身、父親はジャマイカ出身。カリフォルニア州司法長官、上院議員を務めバイデン政権で女性初の副大統領となった。ハリス氏は初めての選挙集会で「トランプ氏はこの国を後戻りさせることを望んでいる」と批判、女性の人工妊娠中絶の権利、銃規制強化などを訴えている。トランプ氏は「ハリス氏は国境を管理できていない」と批判、民主党側を強く非難している。
渡辺さんは、トランプ氏が古き良き偉大なアメリカを取り戻すということを掲げている事に対し、民主党はアメリカの偉大さは変化し続けることにあるということを言ってきた。しかしバイデン大統領が言うと今ひとつ説得力がなく、今回女性でマイノリティもあるハリス氏が言うことによって説得力を持つようになり、党内の熱気が高まってきているという。共和党に比べ民主党は支持母体が多種多様で、それをまとめるときにはある種の熱気はどうしても必要だという。そうした存在にハリスがなれれば勢いも更に増してくるという。中林さんは、ハリス氏は国境関連の問題を任され、移民に「米国に来ないで」というメッセージを言ったところ、民主党内のリベラルな議員たちから猛反発があった。ハリス氏がどこまで繊細に民主党の難しい構成をちゃんとガバナンスをきかせられるかなど課題が残っているという。佐々江さんは、ハリス氏は近年出てきた候補の中で最もリベラルなとこに位置する候補で、左を糾合しながらどの程度中道に作用していけるのかが課題などとし、管理能力・政策能力を示していけば支持率が上る可能性があると述べた。
クラフトさんは、ハリス氏が十分勝利する可能性があると言ったうえで、客観的に見る必要があるという。戦後で現職の副大統領が出馬して当選した例は1988年のジョージ・ブッシュだけ。大統領の夫妻を引き継いでしまうためハードルが高いため。今バイデンが変わったことに党がいきり立っているが、本当にハリスで救世主みたいな言い方は違和感があると現地の民主党員も言っているという。清原さんは、本人の人気がどれだけあるかはポイントだという。一方でタイミングが非常に良かったため、しばらくはハリス氏に対する民主党の中での期待感が高いという。だが、まだ勝機があると言い切るのは早いという。ハリス氏のマネジメント力あるいはこれまでの実績についてクラフトさんは、政治経験が短く、検事という経歴で組織を束ねていく経験も少ないため、ハリス氏のオフィスから退職者がたくさん出ているという。組織を作り上げる力が弱いと指摘。経営力が非常に問われているという。渡辺さんは、国境問題の担当になり半年間現地視察に行かなかったのはまずいと指摘。一方で移民問題はホワイトハウスにできることは限られていて、最終的に議会が法案を通さないと解決できないという。大きな構造的な問題なので、その責任をハリス氏に被せるのは酷な気もするなどと述べた。佐々江さんは、職が人を作るという面もあるとし、いい人を部下においてマネジメントを任せて大きなところを采配していくことで、民主党のシンボルとして輝けばなんとかなる問題だとした。
米国有力誌によると、民主党内ではバイデン大統領の撤退表明後2日あまりで連邦議会議員と州知事286人のうち262人(約90%)がハリス氏を支持したという。中林さんは、まとまらないとトランプ氏を打ち負かすことはできないということで大きなコンセンサスが一気に出てきたという。本来であれば、予備選挙で大多数の票を取ったのはバイデン氏だった。この民主的なプロセス自体を反故にするような形でハリス氏が大統領候補になる事に対し懐疑的な人たちも民主党の中にいたという。でも選挙が迫っているのでまとまる以外にないというのがハリス氏擁立となったという。バイデン氏の撤退の背中を押したものは、最後は数字だという。コロナに罹患し隔離されじっくり考える時間があり、偶然も重なり本人の決断に至ったという。清原さんは、CNNですら党大会の様子にスポットを当てながら共和党が上手くまとまっていく様子を映し、一方で民主党は分裂しているという報道だったので、そういう中でこのままではいけないと思うタイミングが気を熟し、コロナになったということが最終的な決断のタイミングとしてはギリギリだったとした。ハリス氏に変わることで、オバマ元大統領夫妻が支持表明したのは大きく、セレブたちがハリス氏を支持すると表明していったというのも若者に向けたいいメッセージになっているという。渡辺さんは、今の民主党は多様性に敏感になっているので、白人男性が黒人女性を見切るイメージは悪いのでそういうことを考えてハリス氏にしたのではという。佐々江さんは、バイデン大統領に対する説得の仕方が国のため・党のためというのが重要な説得だったという。大統領として副大統領を指名したということは、いざという時に副大統領が自分の代行大統領になるという前提があったという。混乱を収めるうえで、指名することでリードしたと受け止めている。
今月13日、トランプ氏が演説中に銃撃される事件が起きた。クラフトさんは、共和党員を結集するのに影響が大きかったという。拳を上げた絵は、今後教科書に乗るようなアメリカ人が大統領に求める全ての要素が集中しているという。この写真はずっと選挙まで使われていくという。民主党がどれだけ今の結束を保てていけるかが最大のポイントだという。中林さんは、当初は共和党支援しなかったとしてもこれは奇跡だと思わざるを得なかったという。共和党大会を銃撃事件が故に普段見ない人たちもしっかり聞いたため、どういう風に共和党の人たちがこれを咀嚼するか、あるいはトランプ氏の人生を変える事件だったのではなどと注目していた。ただ党大会終わってみると、フリーのトークで本人は変わらないということがあり、最終的にはそこまで巨大な影響にはならなかった可能性が大きいという。清原さんは、党大会そのものは非常に上手くいったとした。佐々江さんは、トランプ氏が暗殺されなかったのはアメリカの民主主義のために良いことだったという。トランプ氏は偉大な政治的なパフォーマーであると感じたという。銃撃事件によってアメリカを統合していこうというよりむしろ守勢に回ることでアメリカをより大きな泥試合に発展する可能性もある印象だという。渡辺さんは、犯人が民主党系でなくてよかったという。共和党大会が成功裏に終わったとし、今の共和党はかなりトランプ党化しているということで、これまでの共和党とは変質したと印象付けられたという。
トランプ前大統領はハリス副大統領について「ハリス氏のほうがバイデン氏よりも倒しやすい」と述べたと報じられている。中林さんは「倒しやすいとは限らないと思う。さらに女性であり非白人であるというハリス氏は、たくさんのことを述べなくてもそういった人口を体現するものをすでに持ってしまっているのでやりづらくなった」、佐々江さんは「トランプ氏の誤算は副大統領候補にバンス氏を選んだこと」、クラフトさんは「党大会で元のトランプに戻ったことがはっきりした。最大の問題は女性票がとれないこと。バンス氏の役割は極右派の支持母体にアピールする、トランプは逆に中道派を取り込む選対本部の戦略だが、トランプも極右派によって戦略が上手くいってない状況」、清原さんは「一般的な世論調査でも高齢であることは批判し易い材料。その点を突けなくなったトランプ陣営はやりにくくなる部分。予備選挙をやってない、急進的なリベラルであることが批判の材料になる」、渡辺さんは「バイデン氏が撤退したことで逆にトランプ氏の高齢が目立つことになった」などとコメント。
選挙戦の争点について。渡辺さんは「過去にアメリカの栄華を見ようとするトランプ陣営と未来を見出そうとするハリス陣営になる。ハリス氏の場合、アメリカ軍のトップとして女性が務まるか、有権者が安心感を覚えれるかも争点として出てくるかもしれない」、中林さんは「中絶問題が女性票を左右すると言われている。銃規制や人権問題などで票がどう動くか今のところの世論調査だとハリス氏に有利に動いているように見える」などと述べた。経済政策の位置づけについて。クラフトさんは「一番大きい問題。今最も不満が多いのはインフレに対するもので、ハリスにとって負の遺産。どう説明するかが彼女の最大のポイント」などと述べた。佐々江さんは「最大の問題はエコノミー。実際上の政策景気がどうなるかという問題と 、選挙戦においてどういう説明をするか、政策論争においてハリス氏がやればカウンターとしては意義のあること」などと述べた。クラフトさんは、民主党員の多くは期日前投票をやるため、9月半ばから始まるため民主党には時間の問題があるという。清原さんは、FOXニュースが移民の国境管理の問題はバイデン政権の失策であるとの論調で流していたため、それを引き継いでしまったハリス氏の大きな争点として叩かれる理由の1つになるとした。


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