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かつて一定の報道の自由が認められてきた香港。しかし中国政府の主導で反政府的な動きを取り締まる国家安全維持法が施行されたことで、メディアへの締付けが強まった。最後まで中国に批判的な報道を続けてきた蘋果日報は、警察の強制捜査を受けて発行停止に追い込まれ、創業者などは国安法違法の罪で、逮捕、起訴され今も裁判が続いている。外国メディアへの影響もでており、取材環境が厳しくなる中で、人員の一部を香港から他の国に移す動きも出ている。こうした中で、もう一つ影を落としているのが、アメリカのトランプ政権による政府系メディアへの予算の削減。国安法の施行後も香港の状況を伝え続けてきた現地の記者は、厳しい状況に追い込まれているとのこと。
湯さんは、VOAの記者として10年以上働くも今年3月に突然仕事を失った。VOAは1942年に設立され、「正確で客観的な報道」を掲げ、約50言語で発信してきた。米政府が予算を拠出しているが、報道の自由が制限される国々の実態を伝えてきた。2019年以降、香港で起きた大規模な抗議デモ。湯さんも連日取材に当たった。特に印象に残っている場所はビクトリア公園とのこと。ここでは天安門事件の追悼集会やデモなどが何度も開かれてきた。しかし国安法の施行後、集会を呼びかけてきた民主派の政党らは解散に追い込まれ、かつての面影はない。湯さん自身も、取材を断られたり、誹謗中傷を受ける危険を感じるようになったという。そして今年3月アメリカのトランプ政権が、連邦政府機関の縮小を進める中、VOAへの資金が停止され、記者ら1300人以上の休職が命じられた。措置の取り消しを行う裁判が行われたが、VOAの大半の従業員が解雇され、業務が停止した。湯さんには、今後についての説明はなく、事実上の契約打ち切りと受け止めているという。予算削減の影響はVOAだけにとどまらず、アメリカ政府系のラジオ局RFAも今年1月広東語のニュース配信を終了した。湯さんは、報道の自由を巡る今の状況に危機感を抱いている。そして、香港市民にとっての情報源への影響、中国にとって今回の米政府系の動きが有利に働いていることなどを現地キャスターは伝えた。