- 出演者
- 国谷裕子 桑子真帆 志村正道
放送開始から30年。今回は5本の再放送。
オープニング映像。
オープニング映像。
今回、羽生善治名人の頭脳に迫る。
- キーワード
- 羽生善治
プロ棋士の通算勝率で1位が羽生善治名人。6月7日の名人戦で羽生善治挑戦者が米長邦雄名人を破り新名人の座についた。羽生新名人は7つのタイトルのうち5つを独占。羽生名人の同世代の強豪が次々と現れ、超新人類「チャイルドブランド」と呼ばれている。彼らの中でも最高勝率7割五分六厘を誇る羽生善治名人。指し手をデータベース化し研究している。過去の膨大な記録をコンピューターから引き出し、それを超える一手を研究している。羽生善治名人は去年、将棋界初の1億円プレイヤーとなった。しかし生活は至って質素。
志村さんは「将棋が特に目立つ。パソコンが広がったことがある。パソコンを使い研究を行うことが起きると思う」などと分析した。
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- 羽生善治
羽生名人が18歳のときの決定的に印象付けた一手を紹介。平成元年1月9日NHK杯4回戦だ。対戦相手は加藤一二三、九段。対局開始から50分後、羽生61手目の52銀が名声を確率した。対局はNHKのスタジオでおこなわれた。NHK杯はいかに手を早く読むかが大切。米長邦雄九段と永井英明さんが注目するなか、羽生の棒銀の攻めにたいし、加藤も応戦。指し手は50手を超える五分五分。60手目羽生は米長らの予想を反して「5二銀」を指す。相手は銀でも飛車でもとれるが王はにげることができない手で若者の頭脳を見せつけた。永井さんの手は忘れられないと当時を振り返る。羽生は当時「ひらめく」などと話をしている映像が流れた。この一手が新しい時代の到来と言われている。18歳の羽生は4人の名人をなげとばした。中原氏は当時を振り返り”発射将棋の内容も加藤さんとの将棋は終盤や自分とも一方的にやられ放送されたくなかった”などと振り返る。
羽生さんの思考、発想について志村正道さんらは「ひらめきはむずかしい」などとトーク。ひらめきは羽生さんが物理学などでいい知恵がでるかは難しい、将棋のひらめきのストーリーができていたなと解説をする。
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- 羽生善治
羽生名人は将棋の対局中、指し手をどのように考えているのか。その思考方法を探るため対局中の脳波を測定した。脳波の測定は日本医科大学の河野貴美子研究員にお願いした。河野さんは脳生理学の専門家。対局相手はプロを目前にして勉強中の中座真さん。公式の対局と同じように真剣に戦うことができる相手だ。測定するのは脳波のうちのβ波。β波は脳が活発に活動している場所から発生する。対局開始後将棋に集中してくるにつれて羽生名人の脳が活発に動き始めた。羽生名人の対局中の脳波を見ると右側と後ろ側が活発に活動している。右脳はイメージや空間認識を司るところ。脳の後ろの部分は視覚野と呼ばれ、映像が映し出される場所。比較のために素人が将棋を指しているときの脳波も調べた。脳の活動はやや左側に偏っている。左脳は言語脳と呼ばれ、言語や論理的な思考を司っている。両者を比べると羽生名人の脳の活動は言語や論理を司る左脳をほとんど使わずイメージや映像を思い浮かべる右脳に大きく偏っていることが分かる。羽生名人は論理的な思考の積み重ねではなく、頭の中に将棋盤をイメージしながら先を読んでいた。河野さんはこれまでにも何人かのプロ棋士の脳波を測定した経験がある。そのなかでも羽生名人は特に脳の活動が右に傾よるという極めて変わった特徴を持っているという。羽生名人の先々を読むスピードをはかる実験を行った。ある将棋の局面を見てもらい、10秒間で何手先まで読めるのかを試した。羽生名人は10秒間で27手先まで読んでいた。その思考の様子を同じ10秒間で再現する。1秒間に約3手。論理の積み上げではなく映像イメージによる思考だからこそできる早業だ。この映像的な思考能力は将棋以外でも発揮されるのか。鳥が並んでいる絵を見てその数を当てる実験を行った。絵を見ていた時間は約1秒半。映像を瞬時に頭の中に焼き付けて、あとから数を確認しているとしか思えない。日本医科大学の河野さんの測定でさらに羽生名人には独特の脳波の動きがあることが分かった。思考を活発にすると逆に脳がリラックスしてくるという現象だ。過去の激しい戦いの指し手を思い浮かべてもらい脳波をはかり、安静時と比較する。羽生名人の安静時に出たα波が表示された。一般には物事を考え始めるとα波の周波数は高くなりグラフは右の方へ移動する。ところが羽生名人は思考をはじめるとα波は反対に周波数が低くなり、左の方へ移動した。α波は周波数が低くなるほどリラックスしていることを意味する。思考に入ったとたん脳がリラックスするという常識では考えられない結果だ。河野さんは「こういう脳波は僧侶が深い瞑想に入ったときに見られている。これを考えると頭の中で必死に考えているというよりも回答が宇宙の彼方からふわっと浮いてくるような思考方法じゃないかなという気がする。」と話す。右脳を使った映像的なイメージによる思考、深い瞑想から湧き出るようなひらめきはが羽生名人の頭脳の秘密だ。
志村さんは「多分脳が自由に活動していると考えていいのでは。例えば夢の中で作曲したとか科学の分野で大きな発見をした例がある。そういう点では夢というのが1つのリラックス状態では。あるいは瞑想もリラックスした状態では。右脳はイメージを司ると言われているが、実際に論理だけで27手を10秒間で読むということは考えられない。右脳を発達させるためには映像を見ることに小さい頃から慣れていること。」などと話した。
羽生善治九段のドキュメントに続き、このあとも今夜は合わせて5本の番組をイッキ見で放送するが、画面のQRコードをお手持ちのスマートフォンのカメラを起動し読み込むと「NHKプラス」には番組が放送されると次々と配信され、放送から1週間いつでも見ることができる。