- 出演者
- 星麻琴
頼れる身寄りがいない単身者が医療を受けられないケースが相次いでいる。見えてきたのは単身者の急増に対応しきれない医療現場の実状だった。
同乗者がいないことで救急搬送を断られたと訴える香川・高松市に住んでいる女性。その後、腸閉塞と診断され4日間の入院となった。救急搬送に同乗者が必要という規定はない。付き添いの確保は病院からの指示だったと救急隊が証言している事がわかった。同乗者がいないことを理由に受け入れを断ったことがあるという病院が複数あった。
高松市の女性は同乗者がいないことで救急搬送を拒否されたとして市を提訴した。身寄りのない単身者は搬送だけでなく手術や検査を受ける際にも問題を抱えている事がわかった。70代女性は「白内障の手術を受ける際に付き添いを誰にも頼めず手術ができなかった」などといった声を紹介した現在9割以上の病院が入院時に保証人を求めるとしている。
愛知・江南市にある江南厚生病院は年間8000件以上の救急搬送を受け入れている。頼れる身寄りのない患者の対応はこの3年で約2倍近くになり現場の負担が増しているという。患者からの相談を受け生活などの支援を行うのが医療ソーシャルワーカー。野田智子さんは身寄りのない患者の支援でまず必要になるのが身の回りの世話だという。救急搬送された70代の男性。頼れる家族がいないため貴重品は自宅に置いたまま。こうしたケースでは野田さんたちが取りに行かざるを得ないことも多いという。野田さんは市の職員と一緒に男性の自宅を訪れ貴重品を取りに行った。医療費の支払いの際にも支援が必要となる。さらに治療後の行き先の確保にも影響する。男性の場合は治療のあとは別の病院でリバビリを受けることになっていた。しかし医療費の支払いが担保されないことに懸念が示され、1か月近く経つ今も行き先は決まらなかった。家族からの情報が無い中で、患者が望む治療をどう判断するのか、そのジレンマに直面していた。
入院時の身の回りの世話、医療費の支払い、治療方針の決定などは家族のサポートなどが前提とされてきた。しかし家族がいない人が増える中で、サポートが得られず、その負担が病院に集中している実態がみえてきた。本人が意思表明出来ない場合でも家族がいれば意思を代弁したりして病院は治療方針を決定することができる。本人の判断能力があれば家族の同意を得なくても治療を行う事ができる。医療費の支払いが難しい場合、成年後見制度を活用し、成年後見人などが支払いの代行をしてくれる。支払い能力がない場合は生活保護を活用することができる。しかし手続きに大きな時間や手間がかかるため現場の負担になっている。高齢者等終身サポート事業者がという民間のサービスがあるがお金がかかってしまう。
愛知・豊田市の社会福祉協議会では去年、1人暮らしの高齢者を支える新たな取り組みを始めた。訪ねたのはここ数年、入退院を繰り返している85歳の女性。今後の備えとして支援することになった。社会福祉協議会が中心となり地域の様々な機関と強力して支援する取み組み。緊急連絡先は社会福祉協議会が担い、身の回りの世話や医療費の支払い、死後の対応まで地元の弁護士や金融機関などと分担してサポートする。年会費や契約金などはない。受けたサポートに応じて数千円程度の利用料を支払う。一方、身寄りのない人同士で助け合う仕組みづくりもはじまっている。鹿児島市のNPOでは週に1度身寄りのない人が集まる交流会が集まっている。ここでは当事者同士が自然と繋がり支え合うことを目指している。こうした支え合いで身寄りがなくても必要な医療をスムーズに受けられるようになっている。脳梗塞を患い3か月入院していた永留健吾さん。この日、付き添ってもらったのは交流会で友人になった男性だった。入院中の身の回りの世話や緊急連絡先を担ってくれたのも、この男性だった。身寄りのない人が支援だけでなく誰かの支えとなること。それは暮しの豊かさにも繋がるとNPOは考えている。
各地で地域包括支援センターやNPO団体の取り組みがあるが、まだまだ地域差があるのが現状。国も支援に力を入れていて、今年の国会で法改正が行われて、認知症や傷害を持っている人のための支援制度に身寄りのない高齢者なども対象に入った。病院のインセンティブとして、診療報酬の枠組みの中に、それを入れていくといったことも考える必要がある。国や自治体による取り組みと同時に国民もしておくべき備えがあるということを認識しておく必要がある。
