- 出演者
- 加藤シゲアキ(NEWS) 宮司愛海 小川哲
今回のゲストは作家・小川哲。前回は直木賞を受賞した際に番組に出演していた。今年8月に漫画家・山本さほと結婚を発表した。小川は学生時代、下北沢の辺りに住んでいたという。「せっちゃん」はお好み焼き屋だが、朝まで飲んだシメに飲みに来ていたという。「般゜若」は芸能界屈指のカレー好きの松尾貴史が手掛けるカレー店。
オープニング映像が流れた。
今回のゲストは作家・小川哲。東京大学大学院在学中に文壇デビュー。2015年『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞。2017年の『ゲームの王国』は第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。2020年の『嘘と正典』で第162回直木賞候補にノミネートし、2023年『地図と拳』で第168回直木賞を受賞した。2022年の『君のクイズ』は第20回本屋大賞にノミネートしている。
小川哲の忘れられない場所「CANDLE CAFE ∆II」を訪れた。ここは小川が20歳頃のときバイトをしていた場所。当時の印象についてオーナーの井上さんは「生意気でしたね」と話す。小川は小学校1、2年生の頃「エルマーとりゅう」を読んでいた。また「21世紀こども百科」を暗記するまで読んでいたという。また児童向けのアガサ・クリスティ作品も読んでいたという。母親が小川を読書家にしようと画策していて、アガサ・クリスティの本を読むとお金がもらえるシステムだったという。小川は小説だけでなく漫画も大好きな少年だった。愛読した漫画に『HUNTER×HUNTER』があり作品づくりでめちゃくちゃ意識したという。『アカギ』について小川は「スゴいハラハラするけど絶対アカギが勝つという安心感がある。そういうエンターテイメントの作り方は参考にした」と話した。小川が夢中になったのは、星新一、筒井康隆、小松左京。『ボッコちゃん』はSF作家の第一人者である著者がショートショートの傑作50編を自選した書籍。小川は「父親が持っていた本を読んでいた。父は普通のサラリーマン。読んだ本をリストにまとめてリスト化し採点表を作っていた」と話した。読書家の両親に育てられ小川は東京大学へ進学。早く独り立ちしたいと思っていところ父親に「国立大学だったらひとり暮らししていいよ」と言われ1日9時間勉強していたという。東京大学は入学1年半に学生の志望と成績に応じて進学する学部や学科を決めて後期課程へ進むことができるといい教養学部に進学した。理系から文転したきっかけはウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』。この本はこれまで哲学が扱ってきたテーマが実は哲学の問題ではないということを証明した本なのだという。
小川哲は東京大学1.2年生は駒場キャンパスに通い、3.4年制は本郷キャンパスに行くが自身は12年間駒場に残ったと話す。佐々木恭子は小川哲と同じ教養学部を卒業し先輩に当たるという。 駒場東大前商店街にある創業70年以上の角屋は地元から根強い人気があり毎日100種以上のパンが売られていると紹介。菱田屋は小川哲が学生時代によく通っていた定食屋で1日勉強で頑張った日のご褒美として訪れていたという。東京大学駒場キャンパスは1933年に1号館が建設され、小川哲は生協書籍部に毎日通っていたと紹介。
小川哲は学生時代最も力を注いだのは読書で、余った時間はずっと東京大学駒場図書館で本を読んでいた等と話す。東京大学駒場図書館には小川哲が愛用していた自習室があると紹介。
小川哲が作家になったきっかけは。東京大学を卒業後、大学院へ進学。大学院在学中の2016年、「ユートロニカのこちら側」で文壇デビュー。この作品で、「第3回 ハヤカワSFコンテスト大賞」に輝く。初応募だったという。文章の書き方は。小川は「論文を書いていたくらいだった。相手に自分の考えを伝えるという意味では一緒。論文を書く時の意識を忘れないようにしようとしていた。形式は違う。小説はいっぱい読んできたから、これは小説として面白くないのはわかっちゃう。読者としての自分をクリアするように直していく。小説家になりたくて小説を書いた。自分の溢れる思いを表現したいよりは、小説家として食べていきたい。26~27歳くらいで考えた。それまでは大学の先生になろうと思っていた。大学の先生がサラリーマンになっていて、自分1人で好き勝手に自由にできる仕事を考えた時、小説しかないと言う発想になった」と話した。その後、カンボジアの現代史を絡めたSF作品「ゲームの王国」を刊行し、数々の賞を受賞。これを機に、大学院を中退、専業作家になることを決意。「嘘と正典」「地図と拳」と、話題作を続々と発表。作品ごとにテーマが変わる小川さんの物語の着想は。小川は「『地図と拳』は編集者から提案があって書いた。『ゲームの王国』は、アジア舞台の小説が少ないからアジア史を勉強してカンボジアを舞台に。自分が知っていることをネタにすると被る。被らないようにするには調べるしかない。書いてみてわからないことを都度調べている。研究者時代のやり方と近い。本当にどん詰まりになってどこにもいけない時もある。プロットは作ってないだけで頭の中にある。数学の答案を作るように考えている時はある」と話した。
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本屋大賞にもノミネートされた「君のクイズ」。物語の内容は生放送のテレビ番組「Q-1グランプリ」の決勝戦を舞台にまだ問題文が読まれぬうちに解答しする「0文字回答」で優勝を果たすという不可解な事態が発生。一体なぜ彼は正解できたのか。そしてこのストーリーの発想の源を小川哲さんに教えてもらった。まずは競技クイズというものに注目するきっかけがあり、元々スポーツ小説を書きたかったとのこと。小川さんは「スポーツは身体の動きなので、小説で表現するとなるとつまらないしスポーツの面白い描写が書けない。そこでクイズをスポーツとして見た場合、その時起こっている現象を文章化しやすいのでコンセプトが完成した」などと話した。また小川さんは「ジャンルがニッチじゃないか?そもそも小説として書く意味はあるのかなど問題点を出していく。そこでニッチの部分では”0文字回答”とすることで興味を引かせ、クイズと小説の接点を探っていった」などと話した。更に小川さん本人や読者が0文字回答に対する意味を考えることで生まれていったという。
小説にするにあたって参考にした描写が「江夏の21球」を思い出したことだという。江夏豊がノーアウト満塁のピンチから1球ごとに相手バッターがどういう考えだったかなどの描写を読者に面白く読ませる手法として編み出したとのこと。また物語が成立しなかった場合の保険として0文字回答だけでなく1文字ずつ増やしていく構想もあったという。小川さんの考える小説の定義として「怒っている現象を言葉だけで表現するのが小説の特徴で、表現だけで言葉以上のものを伝えなければいけない」などと話した。また加藤シゲアキさんも小川哲さんも答えを決めてから書き出すことが多いという。
今回は小川さんがオルタネートに出てくるカルボナーラをリクエストした。助っ人として調理師免許と料理人経験を持つ和牛の水田さんが参戦した。小説に出てくる料理描写から水田さんが食材やレシピをアレンジした。
オルタネートは高校生限定のマッチングアプリ・オルタネートが必須となった現代に生きる3人の学生を描いた青春小説。その1人調理部部長で料理コンテストにも出場経験を持つ新見蓉が作ったカルボナーラの再現をする。作中には本場イタリアのカルボナーラが登場する。まずパンチェッタをサイコロ切りにカットする。次ににんにくとオリーブオイルで炒める。牛乳・生クリームの代わりに卵黄を使用する。チーズを削り卵黄と混ぜる。パルミジャーノ・レッジャーノとペコリーノ・ロマーノの2種類のチーズを使う。本場のカルボナーラはペコリーノ・ロマーノが使われる。調理シーンの描写を加藤さんが朗読した。さらにチヂミも作った。まずズッキーニをスライス状にカットする。水田アレンジでズッキーニの片面を焼いて香ばしさをプラスした。次にタコを一口サイズにカットした。片面焼きのズッキーニとタコを生地と混ぜ合わせ両面約5分ずつ加熱する。特製タレを作る。トマトを微塵切りにする。カットしたトマトに醤油、ごま油、酢、コチュジャン、白ごまを混ぜ合わせる。
水田流のちょい足しアレンジとしてカルボナーラにレモンを加えて味変を楽しんだ。タコとズッキーニのチヂミはトマトの酸味が効いたタレが美味しいなどと話した。
加藤シゲアキ最新作「なれのはて」。好きな絵があるんです。ある事件をきっかけに報道局から異動したテレビ局員の守谷京斗は、イベント事業部で出会った吾妻李久美から、一枚の絵を見せられる。その絵の不思議な魅力に惹かれた守谷は、あるイベントを企画。無名の天才「イサム・イノマタ たった一枚の展覧会」。しかし、使用許可を得ようにも、作者も権利継承者もわからない。手がかりは絵の裏に書かれたサインだけ。どんな人物なのか、どんな人生を歩んできたのか、なぜ絵を描くに至ったか、この画家を知りたい。元記者の知見を活かし、守谷は謎の画家の正体を探り始める。そして舞台は秋田へ。やがてたどり着いたのは、日本最後の空襲。そして、ある一族が隠した秘密だった。死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物の成れの果てだ。一枚の絵を巡り交錯する壮大なミステリー。作家・加藤シゲアキの第二章を彩る、史実に基づく長編小説。
加藤同様史実をもとにした歴史小説を執筆した小川の「なれのはて」の書評は。「オルタネート」を読んだとき、小説に対して本気だということはわかった。「なれのはて」は、トップ獲りに来ようとしてないかと。書く前に出来なかったことにチャレンジして作品を通じて出来ることを増やしていくことを加藤さんが始めちゃったら小説家はどうすりゃいいんだよみたいな感じにみんななってる。ここまでやったんだったらもうやってもらうよみたいな。今後もずっと書いてくれないと話と違うよみたいな。
加藤シゲアキ最新作のなれのはてについて中村文則は加藤シゲアキの表現の幅が広がった飛躍作であり、今後重要な作品になっている等と話した。羽田圭介は今までの作品よりも色々なことを調べて整理して書かれた小説で、観念的な物を伝えるよりかは小説内の情報の開示の仕方で読者の体験として刷り込ませていく職人な手間のかけ方である等と話した。
小川哲の最新作の君が手にするはずだった黄金については小説家の自身を主人公に虚実を描いた怪しげな人物たちと遭遇する6つの連作短編集だと紹介。
加藤シゲアキは小川哲の最新作の君が手にするはずだった黄金についてはこれまでの小川さんの作品とは違うタイプの小説に感じ、作中作家ならではの共感があった等と話した。小川哲は君が手にするはずだった黄金についてを書き始めたのは2019年の地図と拳を連載していた時期からで三月十日から書いた等と話した。また作品ごとに作風を変える理由は1作品ごとに自分の課題があって、作品を意図的に変えているというよりかそれぞれの作品ごとに自分の目標が違く、今回は調べ物をしないのが課題であった等と話した。