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今回の舞台は愛媛・今治にあるサウナ専門店。創業44年、男性専用で、地元の男たちに親しまれてきた。昭和~平成~令和と時代を越えて人を引き寄せてきたこのサウナに3日間カメラを据えた。
今治市の中心部の住宅街の中にある4階建ての建物にそのサウナ店はある。料金は時間別。一番人気は1300円で1日入り放題のコース。土曜日の午後1時から撮影開始。入ってみたがロビーには誰も居ない。しばらくすると1人のお客さんが。高校生の頃から40年ほど通っているという常連さん。ディレクターも一緒に服を脱ぎ、サウナを案内してもらった。サウナに入ると、既に先客がいた。案内してくれた常連さんとは顔見知り。サウナ内でもよく話をする。会話NGのサウナも増えているが、ここは昔と変わらず会話OKとなっている。室温は100℃~115℃と高めの設定。サウナを出ると水温20℃ほどの水風呂へ。これが気持ちいい。1分ほどで出ると、今度は休憩室へ。リクライニングチェアでまったり。そしてまたサウナへ。こうやって繰り返し入って楽しむ人が多いという。ロビーでは食事も提供されており、裸で食事が当たり前となっている。その後も、ぽつりぽつりとお客さんが来店した。20年来の常連だという今治タオルの元職人や、瀬戸内海の島から週2回バスで通っているという漁師さんなどがいた。夜7時半頃、めずらしく若者が来店した。専門学校時代の同級生だという20代の2人組。ここに通い出したのは最近のことだが、サウナ用品を揃えるほどハマっている。夜9時、営業が終了した。
撮影2日目の朝、店主の藤田さんは洗濯をしていた。大量のタオルを毎日洗っているという。もともとは夫婦でやっていたが、夫は17年前に病気で他界し、その後は1人で続けてきた。11時の開店の40分前から店内に2人組が。2人は昔同じ職場で働いていたときに出会ったという。毎週日曜、自宅から歩いて来て、夕方までゆっくりここで過ごすらしい。一方の男性の娘さんはブラジルに留学しているが、離婚していることもあり疎遠となっていることを話してくれた。人生にはいろいろなことがあるけど、休日くらいはすべて忘れてサウナで汗をかく。きのうも来ていた男性が、喫煙所で常連仲間と世間話をしていた。男性にとってここは湯治場のような場所で、いろいろな知り合いに出会って話し、気が紛れることが良いとのこと。造船業などで栄えた工業地帯に近く、この地で働く男たちのオアシスとなっている。みんなで競馬中継を見たり、1人で本を読んだり、それぞれの時間を過ごしている。
撮影3日目。朝一番から1人のお客さんが。いつも病院に行く前に立ち寄っているという。血圧が高くサウナは入れないので、湯船だけ浸かっている。ここで温まってから病院に行くと、病院のベッドの上でよりゆっくりできるという。また、男性はここに来て「ママさん(店主)の顔を見るのが楽しみ」だと話した。お店とお客を越えた関係。時代が変わっても、ここでは何も変わらずに続いている。そうした常連さんに励ましも、店主がこのお店を続けられた理由となっている。夕方、サウナを入り終えた若者と出会った。3年前、営業マンの仕事を辞め、この地に移住してきた。宿を作りたいという夢に向かって少しずつ進んでいるが、行き詰まったりしたときなど、ここに来て店主と話すことで励まされるという。昭和から続くサウナ。その変わらない日常はぬくもりに満ちていた。30年通い続ける80歳の男性がいた。麻雀に行くというと奥さんからいろいろ言われるが、サウナに行くときだけは何も言われない。今はこのサウナだけが楽しみだという。
「ドキュメント72時間」の次回予告。