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日銀は金融政策決定会合を行い、マイナス金利政策を解除し金利を引き上げる決定をしている。世界的にも異例の政策からの転換であるとともに、約17年ぶりの利上げとなっている。また、長短金利操作という金融政策の枠組みも終了となり、金融市場に資金を供給する目的で行われたETFやREITの新規購入も終了する。社債やCPの買い入れも段階的に減らして1年後をめどに終了とする方針。
バブル崩壊後日銀は低迷が続く景気の下支えとデフレ対応に追われていて、デフレ対策として1999年には先進国として前例のないゼロ金利政策が導入された。2000年当時の速水総裁は政府の反対を押し切ってゼロ金利政策を解除したものの、ITバブルの崩壊などから2001年に量的緩和政策が行われることなった。一方で2007年の福井総裁は景気回復に伴って金利を引き上げていたものの、2008年にはリーマンショックが発生してしまった。2008年から総裁となった白川総裁は15回の金融緩和を進めたが、この際もデフレ脱却に繋がらなかった。そして、2013年から就任した黒田総裁は2%の物価目標を掲げ安倍政権とも連携し、2016年にマイナス金利政策を導入するなどし黒田バズーカと呼ばれることもあった。その後2021年に物価は上昇に転じるとここ数年は日銀が目標とする2%の目標を上回るなどし、春闘でも賃上げの動きが進む中でのマイナス金利政策解除となった。
植田総裁はまもなく記者会見を行う。注目すべき点は緩和の条件となる賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の実現が見通せると判断した事がありこれについてどのように触れるかだという。また、利上げのペースなど金融政策の方向性についても注目となる。日本経済は企業業績が上向く一方で個人消費には節約志向が残っていることや、労働者の7割を占める中小企業の賃上げをめぐる発言も注目される。また、解除の決まったマイナス金利政策は日銀が金融機関から預かる金利を-0.1%として金融機関が金を預けると損をする環境を作ることで金融機関がお金を回すように促すものとなっている。
日銀 植田総裁による会見の模様を中継で伝えた。植田総裁は今日行われた金融政策決定会合で、物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったとし、イールドカーブ・コントロール、マイナス金利といった大規模な金融緩和政策の役割を果たしたと考えているなどと説明した。そして無担保コールレートを0~0.1%程度とし、ETFなど新規の買い入れを終了するという。
植田総裁が記者の質問に答えた。「実質賃金はマイナスが続く中で、なぜ政策転換を決断したのか?」という質問に、「賃金と物価の動向を点検し、春闘の結果も含め、賃金と物価の高循環の強まりが確認され、物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至った」などと答えた。また植田総裁は「金利のある世界」への影響見通しなどについても説明した。
植田総裁の記者会見はNHKのニュースサイトやニュース防災アプリで配信中。会見について井村丈思が解説。政策転換を決断したタイミングがポイントで、植田総裁は賃上げの広がりを指摘しており、春闘の結果では賃上げを実現される可能性が高く、ヒアリングでも幅広い企業で賃上げの動きが続いていることが伺えると発言した。これにて賃金と物価の好循環が確認されたことが決断の背景にあると指摘していた。今後の利上げについての質問には、緩和的な環境を維持することが大事で、急激な上昇は避けられると見ているなどと発言している。
今日の日経平均株価は4万円を超え、外国為替市場も円安が進んでいる。市場関係者としては想定内で、日銀が金融引き締めの政策を行った一方で、当面緩和的な金融環境が継続することを案内したことにより、こうした動きになっているとみられ、急激なショックではない。政策転換を行っても緩和策の歪が解消されておらず、日銀は国債の発行残高の半分を保有しているが、金利が上昇すれば国債の価格が下落して保有資産が減少する恐れがある。
植田総裁は会見で賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、これまでのマイナス金利政策といった大規模な金融緩和政策はその役割を果たしていると述べた。