2026年1月17日放送 23:00 - 23:30 NHK総合

ヴェルヌが見る夢〜X年後の世界〜
▽ゲリラ豪雨や巨大台風の制御に挑む科学者たち

出演者
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(オープニング)
オープニング

「人間が空想できることは、人間が必ず実現できる」というのは、19世紀フランスの作家 ジュール・ヴェルヌの言葉。未来への一歩は空想することから始まる。

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ジュール・ヴェルヌ
(ヴェルヌが見る夢〜X年後の世界〜)
20XX年の気象制御

XX年後の世界、災害級の豪雨が異常気象ではなく日常の風景となっていた。災害級の豪雨を予測するや否や、テクノロジーを駆使して弱体化を遂行する。これがXX年後の気象制御。

豪雨弱体化の未来に挑む

豪雨弱体化を空想する人物が京都・宇治市にいる。京都大学防災研究所 気候変動適応研究センターの山口弘誠教授は様々な弱体化メカを研究している。山口教授は、特に研究しているのが大きなカーテンで線状降水帯を弱める洋上カーテンというものだと説明する。約100mは阪神甲子園球場のホームベースから外野フェンスまでがそのくらい。洋上カーテンはその10倍。しかしどうやって空にこんな巨大な物を張るのか。タコで吊るすといい、カーテンを吊るす巨大メカが静岡・裾野市で開発されている。富士山の裾野になる某自動車メーカーの東富士研究所。そのメカを特別に見せてもらう。マザーシップの飛行試験の映像。現段階では最高高度は2500m。ここから1kmのカーテンを吊るす。元々は上空の風を使って発電・通信などを想定したものだった。そんな巨大メカの可能性の山口が目をつけた。トヨタ自動車 未来創生センターの板倉英二さんは、巨大カーテンの素材について、たぶん世界一軽くて強いと思いますと説明。厚さは0.1mm。ある線状降水帯の雨量をコンピューター上で再現したものを見ると、カーテンありでは同じ条件下で雨の量を34%抑えられるという結果が出た。

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トヨタ東富士研究所トヨタ自動車 未来創生センター京都大学防災研究所宇治市(京都)線状降水帯裾野市(静岡)阪神甲子園球場

しかしなぜ山口は豪雨弱体化にこだわるのか。2008年7月28日、兵庫・神戸市の都賀川が突然の強雨によって増水し河原にいた16人が流され、5人が犠牲となった。そして研究室をあげてゲリラ豪雨のメカニズム解明に乗り出した。過去4年分の気象データを分析。2012年、ゲリラ豪雨の前に必ず起こる気流渦と呼ばれる回転成分を持つ気流の流れを発見した。シミュレーションの結果、小さな渦を発生させているのが密集したビル群の地形であることが分かった。それを巨大な渦へと成長させているのがヒートアイランド現象。この小さな渦をなんとかしなければ。山口は洋上カーテン以外にも風を操る二つの方法を空想していた。発生した渦の成長を巨大な風車で食い止める。さらに、都市部の熱を送風機で拡散し、渦が上空に登らないようにする。様々なメカを複合的に効果を増幅させる。2023年、風車だけで豪雨をどれくらい抑えられるかを検証した。風車ありでのシミュレーションでは雨の量を17%弱め、さらに雨が強まるまでの時間も遅らせることが出来た。2025年、風力発電を運営する企業と共同研究を開始。既存の風車を使って気流を制御する方法を模索している。もう一つの課題は「渦が怒っている場所をリアルタイムに探知する技術開発が必要」なこと。気象観測装置、ドップラー・ライダーは風の流れをモニタリングするが、水蒸気も計測できるようバージョンアップしていく予定。洋上カーテン、巨大風車。今後のロードマップを聞くと2030年代の前半には、まずは人が住んでいない場所で実験していきたい、最終的には2050年に実用化だと話していた。

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ゲリラ豪雨ドップラー・ライダーヒートアイランド現象神戸市(兵庫)都賀川
20XX年の気象制御

最悪の未来に抗う科学者がもう一人。彼はこんな空想をしている。XX年後の世界、すでに異常気象の生み出す巨大台風が日本列島へと絶えず接近するようになっていた。巨大台風に対して弱体化措置を講じることで、日本列島への甚大な被害を回避する。これがXX年後の気象制御。

台風弱体化の未来に挑む

台風弱体化を空想する人物が愛知・名古屋市の名古屋大学 宇宙地球環境研究所に在籍し、さらに横浜国立大学 台風科学技術研究センターの副センター長を務める坪木和久教授。坪木は台風観測のエキスパート。2025年10月8日、航空機で名古屋空港を出発。目的地は日本に接近していた台風22号。高度14000mで目に突入する。ドロップゾンデを機体の外に投下。海に落ちるまでの15分間、1秒毎に温度などを事細かに観測。坪木はこうした台風観測を毎年行いデータを蓄積している。

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ドロップゾンデ台風22号台風科学技術研究センター名古屋大学 宇宙地球環境研究所名古屋市(愛知)

台風弱体化にうちこむようになったきっかけは2010年。台風の動きをシミュレーションする研究を行っていた時、坪木は「2070年よりも先の未来において、スーパー台風がより強いものになる その強い勢力を維持した状態で日本本土に上陸する可能性がある」という。スーパー台風は、アメリカの定義で最大風速67m/s以上の台風のこと。最近では2013年にフィリピンに上陸した台風ハイエン。坪木のシミュレーションでは今世紀後半、スーパー台風が日本列島に上陸。しかもフィリピンに上陸したものと同等か、それを上回るものだという結果だった。坪木は「私たちがやろうとしているのは台風の勢力を温暖化で増大した分だけ、今の状態に戻す これを台風減勢という」と説明。ただ大前提として台風の進路と強度と雨量が高精度に予測できる必要がある、そのためには台風のデータが必要になるという。戦後、世界の台風観測をリードしてきたのはアメリカ軍だった。米軍機による台風観測のデータは日本に共有された。この米軍機の観測は、1987年に終了。その後日本は台風を直接観測し続けていない。気象衛星の撮影した雲のパターンから中心気圧を推定している。坪木は、「ところが非常に強い台風になってくると誤差が大きくなってくる もう航空機による(直接)は観測しかない」という。

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ひまわりスーパー台風ハイエンフィリピン

2017年、坪木は航空機による観測を実現。目の中で直接観測したデータを使うことで、台風予測の制度が飛躍的に高まることが明らかになった。坪木は今は何人も航空機に乗り込んで行っている台風内部の観測を無人航空機にやらせようという。そのさらに先にあるのが台風弱体化。坪木は「不安定な雲に刺激を与えることができれば台風の発展のしかたが変わってくる」という。過冷却水滴に何らかの刺激を与えると一瞬で凍るという。凍らせると台風は「最も良い条件で中心気圧が数十hPa弱まる それに伴って風速が10m/s以上弱くなる」などと説明した。しかし実用化には大きな壁があり「台風のどの部分にどれだけの過冷却水滴があるのかを知る必要がある」。そこで坪木は新たな観測装置の開発を進めようとしている。さらに過冷却水滴を凍らせる方法も現在検討中。台風弱体化は他の地域に悪影響を及ぼす可能性はあるのかと質問すると、「実際にはその可能性は極めて低いと思う コンピューターシミュレーションによっていくつも台風を発生させて進路は変わらないで勢力だけが減衰するということを知ったうえでやるから(他の地域に)大きな影響を及ぼすことは考えにくい」と説明した。弱体化の実現はいつ頃になるのかについて早くて2050年を目標にしているという。

20XX年の気象制御

豪雨や台風を弱体化させる気象制御技術。自然を操るという禁断の扉を開くことは許されるのだろうか。坪木に人が自然を操作することの是非を聞くと「最終的にやるかどうかは別として研究者がそれができることを示すのはひとつの使命」などと語った。豪雨弱体化の山口弘誠にも同じ質問をすると「天気を自由自在に操れる技術が将来できるかもしれない ただそれは決して使うべきではないと考えている あくまで自然のあるがままにがベストだが、ただ人命を奪うことは『神さま勘弁して 鎮まって下さい』という気持ちで豪雨を鎮める」となどと語っていた。

(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

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