- 出演者
- 有馬嘉男 大谷舞風
オープニング映像。
- キーワード
- 東日本大震災
茨城県つくば市の防災科学技術研究所では全国各地24時間365日観測されている地震データを管理している。こうした地震を海底で捉えているのがS-net。このシステムのおかげで緊急地震速報が最大30秒、津波の検知が最大20分早くなった。その始まりは1つの巨大災害で突きつけられた痛切な教訓だった。
震災から数日後、東京大学地震研究所で見つかったデータに研究者は衝撃を受けた。データは陸に到達する20分前には巨大津波の実像を正確に捉えていた。データは釜石の沖合70kmで捉えられていた。震災から15年も前に金沢が研究用に設置した津波計の記録だった。日の目を見なかった記録に突如スポットが当たった。
金沢は1971年に東京大学の地震学研究室の門を叩いた。そこで出会ったのが地震学者の浅田敏。陸上での地震観測が主流だった時代にいち早く海底での観測に乗り出した異端の研究者だった。莫大なコストがかかるため敬遠されていた海底での観測に浅田と金沢は独自の手法で乗り出し何度も実験を行った。金沢は地道の海での観測を続け、1996年に海底でリアルタイムに地震や津波を捉える装置を開発し、釜石の沖に設置した。それから15年、津波をいち早く捉えていた。震災発生から11日。金沢は仲間と一通の提案書を国に提出した。東日本の海の空白地帯に観測機を張り巡らせる構想だった。
国家予算約324億円のプロジェクトが5年がかりで動き出した。金沢や篠原、通信会社や国が一体となり、まずケーブルを繋ぐ陸上局の設置から始まった。万が一被災しても他の陸上局からデータを届けられるように万全を期して5箇所設置する計画を立てた。そこには苦い教訓があった。あの日いち早く津波を捉えた釜石沖のデータ。しかし地震発生から30分後、津波が陸上局を破壊しデータが途切れてしまった。陸上局の設置には漁業者の理解が欠かせず、一筋縄では行かなかった。限られた予算では補償金も支払えず、被災した漁師たちには受け入れがたい話しだった。
先の見えない状況に金沢たちは焦りを覚えた。すがるような思いで訪れた宮城県亘理町。宮城県漁業協同組合の会長・菊地は金沢に不信を抱いたが、陸上局の設置を許可した。その裏には亘理町では306人が犠牲になり、6人の漁師仲間を失っていたためだった。ただ問題が1つあった。海底ケーブルと陸上局を結ぶルート上で復興の防潮堤工事が始まろうとしていた。菊地は町長や役場の担当者に直談判し、ケーブルを敷く許可を得て突貫で工事を行った。そして菊地の決断を皮切りに次々と協力を名乗り出る自治体や漁協が現れ、東日本の沿岸で陸上局の設置が進んでいった。
VTRを振り返り菊地伸悦は、将来的に自分の孫、その先におそらく必ず来る。同じ思いをさせたくなかったなどと話した。また金沢は当時菊地と話をした際について、早く作れば良かったと強く思ったなどと話した。
観測装置の工事を託されたのは普段電話やインターネットなどを海底ケーブルで繋ぐ通信会社だった。3つの会社が同時並行で工事を進めることで5500kmに及ぶ観測網を短期間で作り上げようとしていた。KDDIケーブルシップの藤井は震災直後はネット環境を復旧すべく海底ケーブルの修理に奔走してきたが、今回の計画には激しく戸惑った。工事の壁となったのが巨大な観測装置。地震計と津波計を複数搭載することで大型化していた。そのため埋設機が使えずライバル会社のNTTに協力を仰ぎ、埋設機の改造を行った。そして2013年7月に工事が始まり、2017年3月に観測装置150基の工事が完了。世界最大規模の観測網S-netが完成した。S-netにより緊急地震速報は最大30秒、津波の検知は最大20分早まった。その力は相次ぐ地震で発揮されている。今年4月の三陸沖の地震では緊急地震速報が9秒早まった。また、海底で捉えた地震の情報は緊急地震速報を介さず鉄道会社に直接送られる。その仕組で緊急地震速報より12秒早く警報を出力。東北新幹線8本を緊急停止させることができた。
VTRを振り返り藤井はやっとやり遂げられたということで大変安堵したなどと話した。また金沢は藤井さんの仕事ぶりはそれより以前に見ており、全幅の信頼を置いていた。S-netで海で起きている地震を研究する人が爆発的に増えたなどと話した。
- キーワード
- 日本海溝海底地震津波観測網
あの工事から10年。宮城県亘理町では海底ケーブルと豊かな漁場が今も共存している。亘理町で開かれた陸上局の完成式典で菊地には感謝状が手渡された。金沢は80歳になった今も最前線で地震研究を続けている。また後輩たちによって去年南海トラフ地震に備えN-netが完成した。今、緊急地震速報に活用されている海の観測点は250に増えた。
エンディング映像。
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