2023年8月6日放送 9:00 - 10:00 NHK総合

日曜討論
日銀“政策修正” 物価・賃金は 日本経済は

出演者
曽我英弘 星麻琴 
(オープニング)
日銀 “政策修正” 物価・賃金は 日本経済は

今回は物価高が続く中で先月日銀が行った金利政策を修正したことについて議論していく。

キーワード
日本銀行植田和男
(日曜討論)
日銀の決定を どう読み解く?

日銀は先月金融緩和策の枠組みを維持した上で運用を見直す事を決定し、長期金利の上昇を事実上1%まで容認することにした。新浪さんは今回の決定について「インフレや賃上げが行われている中で違和感はないが、インフレ経済を受け入れるというメッセージなどを伝えていた」と話し、森田さんは「長期金利の上昇を容認したことは前提である国債の借り入れなどは変わらないので、すぐさま上昇していくことはないと思う」と話した。永濱さんは「金融緩和の持続性を高める観点は分かるが、市場機能の回復だけを意識し過ぎてしまえば実体経済と乖離してしまう」と話し、河村さんは「小さな一歩にもみえるが、物価動向への自身のなさと先行きの説明のなさなどがが新総裁から聞こえてきて不安」と話した。中村さんは「賃上げを見据えた金融緩和として必要ではあるが、この先緩和を続けていけばさらに賃上げが追いつかない場合があるので金融政策の評価が難しくなっている」と話した。森田さんは「今回の日銀の政策は事前に海外ファンドなどが察知していてサプライズ感がなく、落ち着いた受け止めがあったことから落ち着いた上昇となった」と話した。その他今回の政策で市場が落ち着いた反応をみせ、コミュニケーションやタイミングなどを意識したことなどが話された。一方で新浪さんは「今回のメッセージが国民・社会にうまく伝わったかが疑問で、実質賃金がマイナスの状態では金利有りきの正常な経済を受け入れてもらうには実質賃金のプラスが必要になってくる」と話した。また今回の金融政策の見直しは出口を意識したものではないとの日銀の主張に対し永濱さんは「インフレが今後2.0%で定着しているとみていないための発言だと思う」と話した。

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物価高の影響は 見通しは

日銀はこれまで物価目標を2%に定め大規模な金融緩和を続けてきた。植田総裁は金融政策の基本姿勢について賃金の上昇を伴う形で2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していくとしている。東京23区の先月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数で去年の同じ月より3.0%上昇。食料品の値上げが主な要因となっている。新浪氏は「国民は今の物価を嫌々受け入れているだろう。実質賃金を経済界がもっと上げるという方向性を示せるようになれば少し落ち着いてくるのかなと思うが、まだその段階には至っていないと思われる。河村氏は「金融政策は賃金には直接影響を及ぼせないはず。そこを踏まえて今上がってきた価格転嫁の動きが今ぐらいで止まってくれるようにした上での先行きの物価のコントロールってことを踏まえた金融政策運営をやってもらいたい」等と話した。森田氏は「実質賃金がプラスになるかどうかを見極めなければいけない。日本の場合は過去20数年間で実質賃金がほとんど0。これをプラスにしていくっていう話はこれから何をやっていくかという事にかかっている」等と話した。永濱氏は「今後も物価上昇のリスクはあるわけで、これが良い物価上昇で実質賃金がプラスになれば良いが、実質賃金がマイナスの中で物価だけが上がってしまうと家庭の負担が増えてしまう。政府の物価高対策は今年9月までだが、策定した時は政府が今年度のインフレ率が1.7%ぐらいの見立てで上手くいけば今年度後半から実質賃金がプラスになるという見通しだったと思う。それが崩れてきたということからすると後半年ぐらいは物価高対策については延長した方が良い。個人的に懸念しているのは中国経済。これだけ世界的な40年ぶりのインフレが進む中で中国だけデフレリスクと。まさに30年前の日本と一緒で不動産バブル崩壊の影響が出ていると思う。そうなると最大の貿易相手先は日本からすれば中国なので貿易面で考えると注意が必要。ただ、国内に関しては投資とかを中心に動きが進むのではないか」等と話した。

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フォワードガイダンス日本銀行植田和男消費者物価指数
賃金の動向は 今後の賃上げは/「2%の物価目標」達成をどう判断?

日銀は2%の物価上昇を達成するにあたって、賃金の上昇を伴う形でなければならないと強調している。中村さんは「今回の賃上げから漏れてしまった人達をどう下支えするか極めて重要。どれだけ多くの人に賃上げを波及することができるか、強力に推進していくべき」とコメント。また価格転嫁の重要性についても指摘した。新浪さんは「中小企業にしっかりコスト転嫁ができるような環境づくりを今やっている。それをしないと大手企業の評価に繋がる」とコメント。また「今は給料を上げて人材を育成し、その結果として生産性をあげるのが現在。そういう方向性を持って企業経営をしていく」と話した。一方永濱さんは「物価高対策だけでなく、財政のところで積極的にやっていくことをセットに実質賃金をあげることが望ましい」と述べた。

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日本銀行経済産業省

河村さんは「今生まれてきている価格転嫁の動きなどを察しながらやっていくことが大事」とした上で、財政対策がなされていないことについて強く指摘した。森田さんは「人手不足が大きなテーマ。先進国共通の減少。下手するとスタグフレーションという状況が生まれかねないため、経済政策的に色々な対処が必要になってくる」と指摘。また2%の物価目標達成について、新浪さんは「国民にはデフレのマインドが残ってることを理解して経済運営していかなければならない」と話した。河村さんは「もう目標の2%にいることは間違いないのだから、価格転嫁の動きを加速させることがないように金融政策運営をやっていく必要がある」とコメント。また資産価格の重要性についても指摘した。

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日本銀行
金融緩和の「副作用」 どう向き合う/金融政策の「効果」と「限界」は/これからの経済政策は

金融緩和政策では大量の国債買い入れによって発行残高の半分にあたる500兆円を超える国債残高を保有していて、財政規律の緩みになっているとの指摘もされている。またETFなども大量に買い続けているため日銀が株式市場の価格形成を歪めているとの指摘もある。政府・日銀にはコロナ対策などの財政負担の議論が必要で日銀にも財務運営の健全化が求められている。永濱さんは「政府債務残高GDPの上昇は異次元の緩和以降下がっていて財政規律は緩んでおらず、お金を生み出す中央銀行に時価会計の考え方は合わないのではないか」と話した。森田さんは「ここ10年で日本が金融緩和に依存してきているため、財政規律へ少なからず影響を与えたと考えるべき」と話しその他のスタジオメンバーも財政規律が緩んでいたり何らかの影響を与えたとの見解を示した。森田さんは「金利政策で経済の動向を好転するには疑問符がつく」と話し、永濱さんは「雇用が異次元の緩和政策以降増えていることから金融政策がもたらして影響は大きいが、この後も効果を見込むのが難しい」と話し、中村さんは「需給逼迫があっても賃金が必ず上がるわけではなく、民間主導の競争原理の中の人材投資はあぶれてしまう人が出てしまう」と話した。今後具体的に必要な経済政策について永濱さんは「慎重に出口戦略を踏まえながら、働きやすい正規雇用を増やして財政の安定化を図るべき」と話し、森田さんは「立ち遅れていた構造改革」を行い、労働市場の流動化をして賃上げを促進すべき」と話した。河村さんは「経済諮問会議で賃上げを持続的に行えるように議論して自然な金利変動を行えるようにするべき」と話し、新浪さんは「歳出改革として効果のあるものかどうかをみていき、新しい経済運営を進めていくべき」と話した。中村さんは「一刻も早い賃上げと、賃上げを見据えた転職が安定的に行える仕組みを整備するべき」と話した。

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