2025年2月8日放送 10:30 - 11:25 テレビ朝日

民教協スペシャル
第39回「時給10円という現実〜消えゆく農民〜」

出演者
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(オープニング)
オープニング

オープニング映像。今回は消えゆく農民の声に耳を傾ける。

時給10円という現実〜消えゆく農民〜
時給10円という現実〜消えゆく農民〜

菅野芳秀さんは農家を継いで半世紀。妻の佐智子さんは北海道出身の姉さん女房。農家の跡取りとして生まれたが農業に夢や希望は見いだせず東京の大学に進む。学費、生活費は新聞配達で捻出した。大学3年のとき三里塚闘争に加わる。1971年成田空港建設に対する反対運動は激化の一途をたどっていた。地元住民への事前の説明はなかった。「村が壊れる農業がなくなる」。農民たちは子どもから老人まであらが村を挙げて抗った。2月には機動隊を動員した強制的な土地収用が始まった。農民と支援者たちは砦を築きバリケードや立ち木に体を鎖で縛りつけ地下壕にこもって抵抗した。

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成田国際空港成田市(千葉)西根地区(山形)

千葉県の小学校の教師となっていた佐智子さんは農家を支援するため週末三里塚に通った。2人は砦で出会った。強制収用で逮捕された農民や支援者は2週間ほどで461人。芳秀さんもおよそ90日間収容され独房で自分の身の行く末に考えをめぐらせた。大学を1年遅れて卒業した芳秀さんは沖縄で暮らしたあと故郷に帰り就農。待ち受けていたのはコメの減反政策。食生活の多様化などでコメ余りが深刻だった。当初は行政も農協もこぞって反対していたが、気がつけば長井市内で減反を拒否する農家は菅野さん一人になっていた。菅野さんは減反を受け入れ実る前の青い稲を刈った。

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千葉県沖縄県減反政策

菅野芳秀さんが次に直面したのは農薬の空中散布。子どもたちのために止めなければならない。集落の13戸で取り組んだ減農薬のコメは全て生協が高値で買い取った。生協と産地の提携は広がり、およそ10年を経て置賜地方全域で空中散布は廃止された。菅野さんが40歳のとき大きな転機が訪れる。きっかけはアメリカの酪農家の話だった。生ごみをたい肥として活用し、まちの台所と田畑をつなぐ長井市の「レインボープラン」。まちなか町中の消費者がたい肥の生産者。みんなが土づくりに関わる。そのプランは30年近く続き42カ国から3万5000人以上が視察に訪れた。レインボープランの循環が菅野さんの農業の軸。ニワトリは春から秋にかけては放し飼い。ニワトリのふんは田畑の一級の肥料になり田畑から出るくず米や野菜はニワトリの餌となる。小屋の中でもケージではなく平飼い。三里塚の砦で出会った2人は結婚。同志のように半世紀近く生きてきた。

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ニワトリ減農薬米みのり会長井市(山形)

古くからの仲間たちが集う新年会で今、農業が抱える様々な課題が噴出す。3人の孫娘も加わって薬に頼らない種もみの消毒。長年のきつい農作業で腰とひざを壊した芳秀さんに代わり長男の春平さんが農業の中心を担う。田植えの手伝いは地域おこし協力隊。長井市の2024年4月の平均気温は13.2度(観測史上最高)。翌月、春平さんは田んぼの雑草と格闘していた。除草剤の使用は1回。化学肥料は使用しない。この日、菅野芳秀さんが向かった先は東京の衆議院議員会館。有機農業推進議員連盟から講師の依頼を受けた。コメ農家など1経営体当たりの2022年の収入は補助金も含めて378万円。肥料代や光熱費などの経営費を除けば手元に残る所得は1万円。平均労働時間で割った時給はわずか10円。米価の低迷と資材の高騰が大きな要因だった。コメ農家は特に高齢化が顕著。2040年に現在の60代以上が引退してしまうと農家の数はさらに現在の1割台まで激減すると見込まれている。

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有機農業推進議員連盟置賜百姓交流会衆議院議員会館長井市(山形)

国が進めている大規模な区画整理事業。田んぼ1枚を1ヘクタールに広げる。大型化による生産コスト低減と担い手への農地集積が目的。その陰で大規模化しないできない農民は田んぼから去っている。菅野芳秀さんはある人のもとを訪ねた。2022年に亡くなった農民作家・山下惣一さん。菅野さんが最も敬愛する人物。家族農業や小規模農業こそが価値があるとして山下さんは小さな農「小農」の立場から効率化だけを追求する国の農政に異を唱えてきた。そして2015年小農学会を中心になって設立。小農学会は従来の小農だけでなく田舎暮らしや市民農園などに取り組む都市生活者も新しい小農と位置付けている。天明伸浩さんは山下惣一さんの本がきっかけでコメがつくりたいと思い立ち大学院卒業後およそ30年前に移住した。天明さんら移住者と地元の人たちが協議会を立ち上げ移住者への農地のあっせんや地元産野菜の直売所への配送も担っている。川谷地区は戸数も住民の数もかつての半分以下だが、UターンやIターンで若い人が来て子どもの声が聞こえるようになった。菅野さんのところに東京の高校生が農村体験にやってきた。

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北九州市立大学唐津市(佐賀)小農学会川谷(新潟)福岡大学長井市(山形)

2024年8月末、産地のコメ売り場にも異変。「令和の米騒動」。要因は2023年の猛暑による不作や品質低下。そしてインバウンド需要の増加。農林水産省はさらに8月の南海トラフ地震臨時情報を受け消費者の購入が前年比で2割から4割以上増えたためと分析している。

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令和の米騒動南海トラフ地震臨時情報山形市(山形)農林水産省

菅野芳秀さんと佐智子さんは20年ぶりに「成田空港 空と大地の歴史館」を夫婦で訪れた。地域と空港の歴史をできるだけ正確に後世に伝えていくことを目指し建設された。1990年代、4年に及ぶシンポジウムや円卓会議で和解への道が模索された。国は謝罪し「強制的な手段を取らない」と農民に約束した。滑走路のすぐ南にある通称らっきょう工場。平野靖識さんは大学を卒業後、三里塚に入って半世紀余り。当時反対派の若手農民が始めた有機農業を加工と販売で支援してきた。石井恒司さんは反対運動の主力だった青年行動隊のメンバー。土づくりにこだわった農産物を直送するワンパック野菜をはじめ、現在は若手農家の相談にも応じている。菅野さん夫婦とは50年の付き合い。

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大正大学成田国際空港成田空港 空と大地の歴史館長井市(山形)
(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

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