2024年12月27日放送 1:50 - 2:20 NHK総合

笑わない数学
選 超越数

出演者
尾形貴弘 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

(笑わない数学)
今回は…

今回のテーマは「超越数」。既存の自然数や分数とは全く異なるこの超越数を探す試みは2400年前、古代ギリシャで哲学者のアナクサゴラスが提唱した問題「定規とコンパスだけで半径1の円と同じ面積の正方形は描けるのか?」、つまりは「定規とコンパスだけで長さルートπは作図できるか?」という難問から始まった。

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アナクサゴラス
超越数

アナクサゴラスの難問を解くにあたり、鍵となるのが定規とコンパス。この2つを組み合わせて相似の図形を作図すれば、どのような自然数や分数、果てはルートの長さも作図できる。だが、ルートの長さを作図するには一つのルールがあった。それは「長さαが作図できれば、長さルートαも作図できる」というもの。これを前提にアナクサゴラスの難問に立ち返ると、「定規とコンパスだけで長さルートπは作図できるか?」という難問は即ち「定規とコンパスだけで長さπは作図できるか?」ということを意味する。しかし、アナクサゴラスはどのような手段を以てしても「長さπ」を作図することができなかった。

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アナクサゴラス超越数

アナクサゴラスが解けなかったこの難問に対し、「πの征服者」の異名で呼ばれた19世紀のドイツ人数学者、フェルディナント・フォン・リンデマンは全く別の方法でアプローチした。リンデマンはコンパスと定規で作図が可能な長さ、即ち自然数や分数、ルートにはそれぞれに対応する方程式が存在すると考えた。1/3は3x-1=0の解であるし、ルート2はxの2乗-2=0の解という具合だ。これらは「代数的数」と呼ばれ、コンパスと定規で作図できる長さは代数的数にしか含まれていないと考えたのである。であれば、πが代数的数でないことが証明できれば「長さπ」を作図することは絶対に作図できないことが明らかになる。リンデマンはπが代数的数でない数、「超越数」であることを証明し難問を解こうと考えたのである。

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フェルディナント・フォン・リンデマン超越数

代数的数については古代ギリシャから19世紀に至るまでの時代に様々な数学者がアプローチを試みてきた。虚数iでさえ「xの2乗+1=0の解」となる代数的数だ。なら、「超越数」とは一体何なのか?それを探るための試みは18世紀の頃から始まっていた。当時の数学者たちは「円周率π」と「自然対数の底e」は超越数であると考え、「自然対数の底e」が超越数であることを証明するための研究を始める。当時の数学界におけるリーダー的存在であったジョゼフ・リウヴィルは人工的に超越数を作り出すという方法でこの問題に挑み、「リウヴィル数」を生み出す。これにより、リウヴィルは「超越数」の存在を世に証明したのである。

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エヴァリスト・ガロアジェロラモ・カルダーノジョゼフ・リウヴィルパリ(フランス)フェルディナント・フォン・リンデマンリウヴィル数ルドヴィコ・フェラーリ超越数

リウヴィルによる超越数の発見から30年後、シャルル・エルミートは「自然対数の底eが超越数ではなく代数的数である」と仮定して対応する方程式を書き出したところ、式に矛盾が生じることを発見。これにより、背理法を用いて「自然対数の底e」が超越数であることを証明した。この結果を元に、フェルディナント・フォン・リンデマンは「αが代数的数ならばeのα乗は超越数である」とするエルミート・リンデマンの定理を提唱。この定理によれば「πは代数的数である」と仮定した場合、代数的数である虚数iとπを乗算した際に「i×πが代数的数ならばeのiπ乗は超越数」となる。しかし、この結論はオイラーの公式「eのiπ乗=-1」と矛盾してしまう。ここから背理法によって「πが代数的数ではなく超越数」という結論が導き出せる。こうして、人類はπが超越数であることを証明したのである。

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シャルル・エルミートジョゼフ・リウヴィルフェルディナント・フォン・リンデマンフライブルク(ドイツ)リンデマンの定理レオンハルト・オイラー超越数

「円周率π」と「自然対数の底e」が超越数であることを証明した数学者たちはその後も超越数探しに明け暮れたが、現在までに発見できたのは極わずかだ。しかし、ドイツ人数学者のゲオルク・カントールは「自然数の個数∞自=超越数の数は実数の個数∞実よりも圧倒的に少ない」と証明。ここから、自然界に存在する数の大半は未だ人類が知らない超越数であり、我々のよく知る代数的数はごく一部に過ぎないということが明らかになった。この未知の分野を探るため、現代の数学者たちは超越数を分類しようと考えた。マキシム・コンツェビッチは超越数の中には積分記号で表せるものとそうでないものがあることを発見し、積分記号で表せる数を「周期」と命名。この試みは今後の数学を飛躍的に進化させる可能性があると期待されている。

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ゲオルク・カントールマキシム・コンツェビッチ吉永正彦
(エンディング)
笑わない数学

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