- 出演者
- 合原明子
埼玉県川口市は多国籍タウン。この街でいま異変が起きている。去年7月には100人近くに外国人が集結する騒動が発生。クルド人のコミュニティが拡大し住民との摩擦が目立っている。一方でクルド人を巡っては支援が必要との声も。難民申請が認められず行き詰まる人も。お酢した中で去年川口市は国に政策のみ直しを訴える事態に至っている。
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オープニング映像。
川口市にいるクルド人の多くは中東トルコ出身で、分離独立を求めるクルド人組織とトルコ政府の対立が激しくなった1990年代から日本にも難民としての保護を求めてくる人が増えた。この15年ほどで日本で難民申請したトルコ国籍の人は9700人以上。その多くがクルド人と見られているが認定されたのは1人。現行の法律では難民申請が認められず退去が確定した外国人は原則として退去まで施設に収容される。しかし近年新型コロナの感染対策や人道的観点から施設の外で生活する仮放免の人たちが増加している。そうした人々が多い川口市が国に対して出した異例の訴えの背景を探る。
クルド人の生活を支援している団体がやってきたのは去年来日し、難民申請した家族の元。支援団体によると、クルド人の多くは観光ビザで日本に入国しているという。川口市周辺で暮らす知人などのつてを頼って集まってくるという。近年増えているというのが仮放免になった人々。国外への退去手続き中という立場のために就労や健康保険への加入を認めていない。病院で治療をうけることができずに生活に支障をきたす人も。この日は歯が痛いという女性が治療をうけ、支援団体が治療費などを建て替えた。今川口市が把握するだけでも市内にいるトルコ国籍の仮放免者は900人以上。その多くはクルド人だと言われている。去年9月に川口市はこの仮放免を巡り、国に要望書を提出。不法行為を行う外国人においては方に基づき厳格に対処してほしいというもので就労を可能とする制度を構築してほしい、健康保険などの行政サービスについて、国に責任において適否を判断してほしいという三点を要望した。
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川口市の奥ノ木市長は国には不満を抱えていると答え、地方自治体に全部任せているということが考えられないと答えた。不満の背景あるのは仮放免の前提と実態との乖離。川口市を拠点に解体現場で働いている日本人の男性は、最近多くの現場で働けないはずの仮放免のクルド人を目にするという。深刻な人手不足に直面する解体業界では、仮放免のクルド人がいなければ現場が成り立たないという。仮放免での就労は違法で見つかれば施設への収容につながる。実状を知ってほしいと仮放免のクルド人が取材に応じたが10年前に来日し、解体工として収入を得ている。週6日一日10時間以上でているという男性は日本で産まれた二人の子どもを育てるためだという。また学校に設けられた外国にルーツがある子どもたちのために日本語教室では、クルド人の児童が20人ほど通っている。保護者も日本の言葉や文化がわからない人が多く、個別に対応をしているという。日本は子どもの権利条約に批准しているためにすべての子供たちに教育の機会を保障している。経済的な理由で就学が困難な場合の援助も国籍などによる区別はない。所得が基準を下回っている世帯に学用品の費用や給食費を助成する制度を適用している。最近議会では医療費への懸念が取り上げられる。今市の医療センターでは外国人の未払金が7400万円ほどでその中には仮放免のクルド人の治療費も含まれているという。川口市は実態に応じた制度の見直しが欠かせないという。
国連の機関などで移民・難民政策の実務に長年携わってきた橋本直子さんと、NHKさいたまの記者である藤井美沙紀がスタジオに登場。今回の川口市の国への要望は、「不法行為への厳格な対処」「仮放免者の就労可能に」「健康保険など適否の判断」で構成されている。出入国在留管理庁はこの要望についてのNHKの取材に「仮放免者の中で退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去するのが原則。国費で健康保険などの行政サービスの支援を行うことは困難」との見解を示した。橋本直子さんは、難民認定申請中は退去強制できないルールになっているが人道的な観点から悪いことではない、投じられる税金や人道・人権の観点から仮放免者が増えることは一概に悪いことではない、2018年から難民認定制度の運用が見直され在留許可が下りにくくなっているため非正規滞在者が増えている可能性がある、などと話した。藤井美沙紀は難民申請してから審査の結果が出るまでは平均して33カ月(約3年)かかる、申請が却下され在留資格を失うと退去の対象となるが、現行法では再び難民申請を出せば本国への送還が停止されるという規定があり、それで日本に留まっている人が多いのが実態、などと話した。
日本への滞在が長期間に及んでいる人の実情を取材した。10年前に来日して以来、難民申請を出しているクルド人の家族。3年前までこの家族には、難民申請の審査中に出される在留資格があった。就労ができ、健康保険にも加入できた。しかし、難民申請が却下され一家全員が仮放免となると、就労も健康保険への加入もできなくなった。両親は日本で育った子どもたちの将来を懸念している。現在、子どもたちは市内の小学校に通えている。しかし、仮放免で教育が受けられるのは義務教育まで。その後も学び続けられるのか不安を抱えている。仮に進学できたとしても働くことができない。家族は毎週末、支援団体が運営する日本語教室に通っている。日本の文化や言葉を身につければ、家族の将来を切り開けるのではないか、一縷の望みをかけている。
スタジオでは入管法が改正されたことについて話題になった。そこで橋本直子が新入管法について解説した。新たに「こども在留特別許可」もあると伝えた。橋本直子は今後について「カギは体感治安」だと見解を語った。
出演者がエンディングの挨拶。