- 出演者
- 首藤奈知子
オープニング映像が流れた。
新潟県の米どころ・上越市。200ヘクタールを耕作している大規模農業法人である。今月上旬、コシヒカリの収穫が最盛期を迎えていた。この会社ではドローンを使って肥料をまいたり、田んぼの状況をデータで分析したりして生産量を増やしている。高齢化などで耕作をやめた農家の土地を借りて、大規模化を進めてきた。20年間で耕作面積は20倍にまで広がっている。しかしこれ以上拡大するには課題があるという。会社が耕作している田んぼはところどころ“飛び地”になっていた。田んぼが点在しているともみの運搬回数や農地と農地の移動時間が多くなる。さらに増産のためには新たにコメの乾燥機やトラクターなど数億円単位の設備投資が必要になるという。
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- 上越(新潟)
取材を進めると農地を集約できない構造的な問題も浮き彫りになってきた。吉際昇さんと松倉一浩さんは栃木県大田原市でほ場整備事業を行っており、元々バラバラだった農地を農家や自治体などが費用を負担し合って区画化し10年ほどかけて整備するものである。大型機械の活用や移動などの時間が短縮され、生産性を上げることができるとされている。昭和40年前後から全国で行われてきたが、近年ニーズが高まり政府も今後の農業政策の要の一つと位置付けている。しかし“思わぬ事態”もあり農地を整備するには境界を明確にするため土地の所有者の同意を得る必要があるが、所有者の所在がわからず“連絡がつかない”ケースが相次いでいる。栃木県は現在大田原市の6地区で事業を進めているが、当初の想定通りにいかない所も少なくないという。さらにもう一つ頭を悩ませているのが所有者が亡くなっているケースである。先週吉際さんたちの地区で会議が開かれ、県の担当者からようやく1か所の同意が取れたと報告があった。本格的な着工は来年秋の予定であるがどこまで同意が取れるか不安は尽きない。
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- 大田原(栃木)栃木県那須農業振興事務所
栃木県ではことし5月から「所有者不明農地」の問題解決に向けて司法書士が農家をサポートする栃木県司法書士会と県農業会議が行われている。ここからは日本総合研究所の三輪泰史さんと伝えていく。「所有者不明農地」は全農地の約2割とされているがなぜこうした事態になっているのか。農家の方が高齢化している中でその農地をバトンとして次の世代に渡していくというタイミングであり、所有者がわからない農地が虫食い状態になっているとのこと。また使っていない農地については自治体がもう少し自由に裁量を持ち、区画整備などをやってもよく使っていない農地の課税を強めたりするのも必要だという。「あなたも所有者かも?」についてはポイントは3つあり、「2024年 相続登記 義務化」「10万円以下の過料も」「相談は最寄りの自治体や司法書士に」とのことだった。また高騰続くコメ価格について安定化の道筋も話していった。もう一つ大きな課題となっているのが日本の農地の4割を占める中山間地だという。
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- 農林水産省
新潟県十日町市の農家の徳永稔さんは中山間地の田んぼおよそ20ヘクタールを従業員2人と耕作している。中山間地では地形に沿う形で田んぼや農道が作られているため、管理には手間がかかるという。2年前に約450万円をかけて、GPS付きの田植え機を導入。自動操縦で労力を減らせると考えていたが、山奥の一部では携帯電話の電波が届きにくい場所もあった。そのため中山間地では機能を十分に活かせず、他に管理している平地で使用している。次々と担い手がいなくなり、農地の荒廃が進む中山間地。徳永さんは地元の農家とともに、耕作放棄地などの調査を進めている。この日は放棄された田んぼの跡を新たに見つけた。10年後の担い手を示した地図では今75歳を超えた農家が担い続けているという農地も少なくない。それでも徳永さんは中山間地の田んぼを守りたいと考えている。中山間地の田んぼは鹿や猪など獣を遠ざけたり雨水を溜めるダムとして水害を防いだりする役割があり、平地にとっても重要だからである。「中山間地を守るカギは?」について、新潟県上越市で農業法人を経営している保坂一八さんは中山間地と平地を組み合わせて維持する仕組みを進めている。地域にある12の農業法人・農家と連携し、農地を一帯で管理している。全部でおよそ400ヘクタールあるが、そのうちの6割余りが平地で残りが中山間地である。皆で農機具を共有し、肥料や農薬などを共同で購入しコスト削減につなげている。農業法人の若手社員が中山間地を手伝うことでベテランの農家からノウハウを学ぶ経験にもつながった。こうした取り組みによって、中山間地の農地を維持しながら生産量の拡大につなげている。
中山間地の農地を今まで通り守るのは難しくなってくるため、メリハリが必要になってくるという。儲かる農業と守る農業をしっかり分けていくというのがこれからの中山間地の政策のポイントになってくるとのこと。今は中山間地での使用を目的とした小型の自動ロボットの“耕作ロボット”や“種まきロボット”などがあり、政策効率が飛躍的に上がると期待されている。「消費者ができることは」についてはこれまでは農業者と消費者は真逆に置かれた存在だったが、消費者が農業者により寄っていくということが重要だという。