2023年11月18日放送 0:55 - 1:55 フジテレビ

高松宮殿下記念世界文化賞
第34回

出演者
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(オープニング)
芸術は社会を変える 日本に集った芸術家たち

11月24日に開業し、日本一高いビルとして注目を集める麻布台ヒルズ。芸術家オラファー・エリアソンさんの作品が展示されている。文化・芸術のノーベル賞といわれる「高松宮殿下記念世界文化賞」、今年の受賞者だ。「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」は、リサイクルした金属を使っているのが特徴。サステナビリティの考えを表現している。環境問題を強く意識した作品を発表し続けているエリアソンさんは、「芸術は社会を変える」と語る。

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アイス・ウォッチ港区(東京)相互に繋がりあう瞬間が協和する周期高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 彫刻部門麻布台ヒルズ

その新年をともにする芸術家が、東京・元赤坂の明治記念館に集まった。今年の世界文化賞受賞者だ。主催する日本美術協会総裁・常陸宮さまの御名代・常陸宮妃華子さまご臨席のもと執り行われた授賞式。絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像、5つの部門でその発展に貢献した受賞者にメダルが授与された。混乱の時代を生き抜き、精緻な絵画を生み出し続けるアーティスト。壮大なスケールの作品で気候変動に立ち向かう現代美術の旗手。アフリカ最貧国の教育を活性化させた世界的建築家。差別への怒りを胸にジャズ界を牽引、9度のグラミー賞に輝いた天才ミュージシャン。セリフのない、まったく新しい沈黙の演劇を生み出した演出家。彼らが作品に込めた想いと情熱とは。争いが絶えず分断が深まるこの世界だからこそ社会を変える芸術の力が求められている。

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The Lost Paradise - Arvo Part & Robert Wilsonアダムの受難ウィントン・マルサリスオラファー・エリアソングラミー賞ディエベド・フランシス・ケレニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズロバート・ウィルソンヴィヤ・セルミンス元赤坂(東京)常陸宮正仁親王日本美術協会明治記念館正仁親王妃華子高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 建築部門高松宮殿下記念世界文化賞 彫刻部門高松宮殿下記念世界文化賞 演劇・映像部門高松宮殿下記念世界文化賞 絵画部門高松宮殿下記念世界文化賞 音楽部門
オープニング

オープニング映像。

(高松宮殿下記念世界文化賞)
音楽部門 ウィントン・マルサリス

音楽部門受賞者は、世界的ジャズ・トランペッター、ウィントン・マルサリスさん。完璧と絶賛されるトランペットの演奏技術。作曲家としても多くの名曲を生み出してきた。アメリカ音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞を22歳で初受賞すると、これまで9回も獲得。そんなマルサリスさんを10代の頃から間近で見てきた1人の日本人が、日本を代表するジャズ・ジャーナリストの小川隆夫さんだ。ジャズは、奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人の音楽とヨーロッパの音楽が融合して発展したといわれている。マルサリスさん自身も差別にあっていた。

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グラミー賞高松宮殿下記念世界文化賞 音楽部門

マルサリスさんが生まれたのは、1961年のアメリカ南部の街。教会などでは黒人は白人と離れて座らせられるような地域だった。ジャズ・ミュージシャンの父の影響で、トランペットを始めたのは6歳の時。兄・ブランフォードさんは、弟が受けた差別を「ウィントンが最初に入ったオーケストラでは、オーボエ奏者が全員わざとどこか音を外して吹いていた。ただ黒人を追い出したいがために。だがウィントンはそういう状況に置かれれば置かれるほど燃えるタイプなんだ」と証言している。黒人に対する日常的な差別。マルサリスさんはやがて1つの夢を抱く。世界中から人種を超えトップミュージシャンが集まるニューヨーク、そこで音楽を学びたい。マルサリスさんは血のにじむような練習を続けた。その甲斐あって、17歳でジュリアード音楽院に入学。すると、大きな転機が。ジャズクラブで飛び入りの演奏をすると、ある大物の目にとまる。ジャズの名ドラマー、アート・ブレイキー。彼のバンドの一員となり、18歳にしてプロデビューを果たす。その後は数々の有名アーティストと共演。確かなテクニックと類まれなる表現力が高く評価され、22歳でグラミー賞を受賞。ジャズ界を牽引するトランペッターとしての地位を確立していく。しかし、1992年、アメリカでは黒人差別がきっかけとなり暴動が勃発、60人以上の死者が出た。その5年後、マルサリスさんが世に問うたアルバムのジャケットは、血塗られた星条旗。歌詞で表現したのは、かつての黒人奴隷の生活。それは悲しみに満ちたものだった。人種差別に正面から向き合ったこのアルバムは、ジャーナリズム界で最も権威あるとされるピューリッツァー賞の音楽部門を受賞。ジャズ界初の偉業だった。

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アート・ブレイキーアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズウィントン・マルサリスは本当にジャズを殺したのか?エリス・マルサリスグラミー賞シンク・オブ・ワンシンコーミュージック・エンタテイメントジュリアード音楽院ニューオーリンズ(アメリカ)ニューヨーク(アメリカ)ハイドン: トランペット協奏曲ピューリッツァー賞フラー・ラヴブラッド・オン・ザ・フィールズブランフォード・マルサリスロサンゼルス暴動ロサンゼルス(アメリカ)

今回、授賞式のために来日したマルサリスさん。20年ぶりに再会した小川さんから「当時よく“品格”という言葉を使っていた」と質問を受けた。怒りのうちにも敬意を保つ。小川さんは、若き日のマルサリスが忘れられない。酒やドラッグに溺れ、音楽に怒りをぶちまけても、憎しみの連鎖が分断をさらに広がるだけ。だからこそ、マルサリスさんは品格を保とうと努力し続けてきた。授賞式が行われた10月18日は、マルサリスさんの62歳の誕生日だった。分断や差別がなくならないこの世界で、それでも音楽の力を信じて演奏するその姿に、惜しみない拍手が贈られた。

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ウィントン・マルサリスの肖像
芸術は社会を変える 歴代受賞者 豪華な顔ぶれ

今年で34回を迎えた世界文化賞。これまで、33の国と地域から175人の芸術家を選出、その偉業を称えてきた。受賞した豪華な顔ぶれを紹介。日本人として初の受賞は、映画監督の黒澤明さん。名作「七人の侍」は、世界中の映画関係者・映画ファンに大きな影響を与えた。建築家の安藤忠雄さんも受賞。高い評価を受けたのが、コンクリート打ちっぱなしの作品だ。元プロボクサーで、建築は独学だったことから、建築界の異端児と呼ばれた。前衛の女王の異名を持つ草間彌生さん。水玉をモチーフとする作品で、見る者の心を掴み続けている。アメリカ・ハリウッドの巨匠も受賞している。映画監督のフランシス・フォード・コッポラさん。代表作の1つ「ゴッドファーザー」、マフィアの掟とファミリーの盛衰を家族愛とバイオレンスで描いた、壮大なストーリー。アカデミー賞3部門を獲得した、映画史上に輝く傑作だ。授賞式には、大ファンだという三谷幸喜さんが駆けつけた。サインのおねだり、快く応じてくれた。同じく映画監督ヴィム・ヴェンダースさん。今年は、役所広司さんが主演する新作の公開が控えている。世界の名だたるオーケストラで活躍する指揮者、小澤征爾さん。受賞の前年、食道がんを乗り越え、奇跡の復活。その音楽は、人々に勇気を与えてくれた。

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PERFECT DAYSアカデミー賞ゴッドファーザーゴッドファーザー 4K Ultra HD+ブルーレイフランシス・フォード・コッポラヴィム・ヴェンダース七人の侍三谷幸喜安藤忠雄小澤征爾役所広司茨木市(大阪)茨木春日丘教会草間彌生食道がん高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 建築部門高松宮殿下記念世界文化賞 演劇・映像部門高松宮殿下記念世界文化賞 絵画部門黒澤明
芸術は社会を変える 賞を支える国際顧問

世界文化賞の選考の中心となるのは国際顧問で、1984年の創設時から錚々たるメンバーが名を連ねている。現在はランベルト・ディーニ、クリストファー・パッテン等の5人が務めている。5人の推薦を受けて日本美術協会が最終選考をする。

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アミントレ・ファンファーニエドワード・ヒースクラウス=ディーター・レーマンクリストファー・パッテンジャック・シラクジャン=ピエール・ラファランデイヴィッド・ロックフェラーヒラリー・クリントンヘルムート・シュミットランベルト・ディーニ日本美術協会日枝久高松宮殿下記念世界文化賞
芸術は社会を変える 世界に広がる共感の輪

受賞者発表に伴うイベントは世界各地の特別な場所で行われてきた。今年はホワイトハウスで祝賀式が開かれた。2011年はイギリスのバッキンガム宮殿で行われ、エリザベス女王が受賞者1人1人と握手をしていた。

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エリザベス2世ジル・トレーシー・ジェイコブズ・バイデンバチカンバッキンガム宮殿ヒラリー・クリントンヘラクレスの間ホルヘ・マリオ・ベルゴリオホワイトハウスヴェルサイユ宮殿常陸宮正仁親王正仁親王妃華子
彫刻部門 オラファー・エリアソン

麻布台ヒルズのエントランスに世界文化賞彫刻部門で受賞したオラファー・エリアソンさんの作品が展示されている。展示されている彫刻作品は工場などから空気中に排出される亜鉛などの金属を材料としている。オラファー・エリアソンは一貫して人間と自然の関係をテーマにしていて光を使用し、金沢21世紀美術館にもカラー・アクティヴィティ・ハウスが常設されている。オラファー・エリアソンは気候変動は数ある危機の1つで、芸術は私達が気候変動に対して行動できる唯一のものである等と話している。

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アイスランドアイス・ウォッチイーストリバーウェザー・プロジェクトカラー・アクティヴィティ・ハウスニュープラネットニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズビューティーロンドン(イギリス)森美術館港区(東京)相互に繋がりあう瞬間が協和する周期瞳の距離金沢21世紀美術館金沢市(石川)高松宮殿下記念世界文化賞麻布台ヒルズ
演劇・映像部門 ロバート・ウィルソン

演劇・映像部門はロバート・ウィルソンさんが受賞した。2005年愛知県で開催された愛・地球博の目玉となったのが池の上に浮かび上がる巨大なサルのオブジェだった。そこに人類が生み出してきた歴史的な建造物が重ねられていく。奇想天外な光のアートは宇宙人類の文明、過去から未来まで祝福する壮大なイメージを形にした。2015年にアダムの受難が上演された。これは90分間一言もセリフがない。ウィルソンさんはアメリカ・テキサス州に生まれた。大学を卒業後、27歳で劇団を立ち上げた。その時に出会った少年が沈黙の演劇のきっかけとなった。富山県利賀芸術公園は6つの劇場を備え毎年夏に国際演劇祭を開催する。約40年前この地にウィルソンさんは招聘され沈黙の演劇を披露した。招聘したのは鈴木忠志さんだった。ウィルソンさんは聾者の視線という1時間を越える無言劇を上映した。無のレクチャーではウィルソンさんは自ら主演を務めた。テーブルのグラスの証明にこだわったという。

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2005年日本国際博覧会The Lost Paradise - Arvo Part & Robert Wilson“無”のレクチャーこいの池‐ナイトイベントアダムの受難アルヴォ・ペルトサルタリン(エストニア)テキサス州(アメリカ)ロバート・ウィルソン利賀フェスティバル’82劇団SCOT劇団唐組南砺市(富山)唐十郎富山県利賀芸術公園寺山修司愛知県有田泰而松岡和子聾者の視線高松宮殿下記念世界文化賞 演劇・映像部門
建築部門 ディエベド・フランシス・ケレ

ディエベド・フランシス・ケレさんは去年プリツカー賞にも選ばれた。ケレさんはザイレムをアート施設の敷地に作った。この地に多く生える木を使って作られている。ケレさんはブルキナファソの出身。乾季には40度を超す厳しい暑さに雨季の豪雨がこの国の人を苦しめている。ケレさんは勉強を続けドイツに留学を果たした。ケレさんの夢は涼しく明るい学校の建設とのこと。ケレさんは粘土に目を付けた。ケレさんはガンド小学校を完成させた。120人だった生徒は校舎が完成してから700人になった。さらに中学校や大学もケレさんの設計で建築されるようになった。

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ガンド小学校ザイレムティペット・ライズ・アート・センタードイツブルキナファソブルキナ工科大学プリツカー賞モンタナ州(アメリカ)リセ・ショルジュ中学校東京都庭園美術館港区(東京)高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 建築部門
絵画部門 ヴィヤ・セルミンス

世界文化賞・絵画部門を受賞したのは、ラトビア出身のヴィヤ・セルミンスさんである。モノクロ写真と見紛うほど精緻に描かれた「ヒロシマ」は、一瞬で焼け野原となった原爆投下直後の広島を描いた。実はこの絵画はその状況を写した写真を絵にしたものである。セルミンスさんは歴史の様子を目に焼き付け、作品に昇華させるアーティストである。彼女は自身の作品について「言葉ではうまく言えないが、幼少期の戦争体験の影響があったことは否めない」などと話した。1938年にラトビアで生まれたセルミンスさんは2歳の時にソ連軍がラトビアに侵攻し一家でドイツの難民キャンプに逃れた。そして9歳の時にアメリカに移住したが英語が話せなかったこともあり、ひたすら絵を描いていたという。その姿を見た教師たちが彼女の才能を見出し芸術の道へ進むよう後押しした。移民先で才能を見出され、数々の作品を世に送り出していったセルミンスさん。2021年に教育支援で名高いニューヨークカーネギー財団から偉大な移民の1人に選ばれ讃えられた。彼女の人生は若き才能への支援・大切さを教えてくれる。

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6パーツからなる絵画(詳細)アメリカソ連テレビドイツヒロシマラトビアヴィヤ・セルミンス燃えている男蜘蛛の巣#3高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 絵画部門
若手芸術家奨励制度 ハーレム芸術学校

世界文化賞は才能ある若者の育成を目指し「若手芸術家奨励制度」を制定している。今年は2団体選ばれた。 1つ目はハーレム芸術学校である。ハーレム地区にある学校で、今では文化・芸術の新地として知られている。この学校では約1600人の生徒が学んでいる。学校運営の資金は寄付に頼り楽ではないものの、それでも生徒たちの夢を後押ししてきた。1960年代のハーレム地区では暴力と麻薬が蔓延る町として知られていた。そこにソプラノ歌手のドロシー・メイナーさんがハーレムの一角にあった教会の地下で子どもたちにピアノを教え始めた。その活動が住人の共感を呼び、1964年にハーレム芸術学校が創設された。それから約60年。メイナーさんの思いは今でも引き継がれている。今回生徒たちはホワイトハウスでの祝賀会で演奏するという貴重な体験ができた。その中に音楽部門を受章したウィントン・マルサリスさんもいた。

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ウィントン・マルサリスドロシー・メイナーハーレム地区(アメリカ)ハーレム芸術学校ブロードウェイ劇場ホワイトハウス高松宮殿下記念世界文化賞高松宮殿下記念世界文化賞 音楽部門麻薬
若手芸術家奨励制度 ルーラル・スタジオ

アメリカ・アラバマ州にあるルーラル・スタジオは、貧困が問題になっているこの街で安全な町を安価に提供出来るよう地元大学が創設した建築事務所。このスタジオでは学生が町のために建物を創り、建築家として腕を磨いていくプロジェクトが行われており、設計から施工、完成まで学生が責任を持って取り組んでいる。住民が支援を必要とする保護施設には、大きく張り出した屋根によりアラバマ特有の強い日差しを避ける工夫が施されている。110年ぶりの公共施設となる消防署や図書館も建てた。貧困地域に活力を与えるルーラル・スタジオではこれまでに1200人の卒業生が社会へ巣立っている。

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ニューバーン図書館ニューバーン消防署ニューバーン(アメリカ)ルーラル・スタジオ
(エンディング)
エンディング

今年の授賞式の最後、舞台演出家のロバート・ウィルソンは「私の舞台作品は世界共通の言語でもある沈黙で始まる。政治や宗教は常に私達を分断するが、芸術は人を1つにする可能性を秘めている。受賞者である私達に名誉や、さらなる課題を与えてくださり感謝しております。」などと話した。

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アイス・ウォッチヒロシマロバート・ウィルソン高松宮殿下記念世界文化賞
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トクメイ!警視庁特別会計係

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