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石川県輪島市で今年8月に行われた輪島大祭。キリコと呼ばれる巨大な灯籠に神を宿し地元の五穀豊穣や大漁祈願を願うお祭り。2024年1月1日、能登半島地震はマグニチュード7.6を記録し6532戸が全壊、輪島市では災害関連死も含めて226人が死亡した。それから約9か月、能登半島を襲った豪雨は観測史上最大1時間あたり121ミリの豪雨。多くの場所が水没し土砂崩れが発生、輪島市では13人が死亡した。輪島市では震災前に比べ人口が3割減少した。今年の夏も日本は猛暑に見舞われた。輪島は復興へむけて動きだしている。気候変動対策として、地元に雇用を生む地域活性化策として注目されているのが浮体式洋上風力。それを輪島の海に誘致しようと立ち上がったのが輪島に住む4人、通称輪島の4Gだった。
オープニング映像。
輪島建設協同組合に浮体式洋上風力推進室がある。中にいたのはこのプロジェクトを立ち上げた3人のメンバー。生粋の輪島人で、通称3Gと呼ばれている。発起人は市内の建設会社の顧問・刀禰芳昭さん。輪島の歴史を見続けてきた一人。漁業と漆器業で栄えてきた輪島、江戸時代から明治時代にかけて日本海や瀬戸内海を中心に活躍した大型船の商船・北前船の寄港地として発展した。輪島の朝市や輪島塗が全国的に有名になり、観光ブームもあった。バブル崩壊で人口減少が加速。約4万人いた人口は2年前には約2万人になった。去年の震災後、人口は3割減少した。朝市があった場所は火災が発生し多くの建物が焼け落ちた。3Gの一人、二俣さんが朝市を案内してくれた。二俣さんは輪島の現状を変えるには浮体式洋上風力しかないと考えている。洋上風力は部品の製造やメンテナンスなど地元に多くの雇用が生まれる。浮体式洋上風力を日本で初めて誘致した長崎県五島市では、人口流出に歯止めがかかり多くの雇用が生まれた。五島市では全9基が運転開始する来年1月以降、再エネ率が約80%になる予定。3Gの皆さんは輪島でも浮体式洋上風力で人口流出を止めたいと考えている。3Gの最年長・竹林さんは震災前に妻を亡くし、現在は仮設住宅で一人暮らしをしている。竹林さんが浮体式洋上風力をすすめたい理由は沖合でできれば景観も騒音も解消するということ。主な風力発電は陸上風力、着床式洋上風力、浮体式洋上風力の3つ。国内で数が多いのは陸上風力と着床式洋上風力。人の生活圏に近いと景観に課題がある。そこで注目されているのが、チェーンなどで改定に係留し海に浮かべる浮体式洋上風力。陸地から離れた深い海に設置が可能で人の生活圏から遠く騒音も届かない。海上は風が強く発電量もアップするため、深い海に囲まれた日本と相性が良いとして注目されている。
3Gに新しいメンバーが加わった。大学で浮体式洋上風力の研究をすすめてきた佐藤義久さん。佐藤さんは東京から単身移住してきた。3Gから4Gとなって、2023年から本格始動した。建設を予定する場所は輪島の沖合25キロの海域。約50基の風車を海底ケーブルで輪島などに電気を届ける。予定している80万kWの発電容量は約67世帯分の電力に相当する。世界最大規模の浮体式洋上風力を輪島の海にといのが4Gの希望。計画では2033年に着工、2036年に運転開始。そのとき4Gは全員80代以上になる。目標のためにこれまで日本各地の洋上風力を視察してきた。長崎・五島市では日本初の浮体式洋上風力を視察した。去年の地震と豪雨災害によって4Gはプロジェクトを断熱しようと思うほど動揺した。それでも諦めきれなかったのは、佐藤さんから「復興風力」だと励まされたのだという。この言葉が3Gの背中を再び押した。2024年8月には環境省の実証事業に採択された。輪島市長の坂口茂さんもこれからの創造的復興にとって一つの大きな柱になると話している。輪島市では今年3月、洋上風力の誘致検討協議会を開催、各業界団体が参加し全会一致で誘致の推進が可決された。
浮体式洋上風力について地元住民たちはどう思っているのか?輪島の朝市で商売をしてきた女性は、何でもいいから輪島に持ってきてほしい、さびれてしまうと話す。輪島塗を販売する男性は賛成、是非やってほしいと話す。輪島で旅館を経営している人は、計画が実現しないと輪島は浮上できないくらい期待していると話した。漁師の橋本さんは、漁師にとってはデメリットが出てくると話す。
輪島で漁師として働く橋本さんが港を案内してくれた。能登半島地震で土地が隆起してしまい、多くの海岸線では海中の土壌がむき出しになっている。それが港でも起こり、現在は浮桟橋を設置して対処しているが、荷揚げに重機が必要なため人手が足らず作業がなかなか進まないという。被害の影響を今も受ける漁業者たちは浮体式洋上風力に対して、漁師にとってはデメリットのあるのではないかと話す。20年以上海女さんとして海を見続けてきた門木さんは海の中は変化していると話す。豪雨で流された泥が堆積したり、水温上昇などもあり一時は生き物の姿はなくなった。4Gたちは地元の居酒屋で漁業関係者や地元への説明について話し合っていた。
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- 令和6年 能登半島地震輪島市(石川)
江守正多さんは日本の沿岸は水深が深くなるので、浮体式洋上風力に向いていると話す。さらに漁礁効果があることもわかってきた。2012年再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートし、太陽光発電が一気に増加した。
今年6月、4Gは世界有数の再生可能エネルギー先進地であるイギリス・スコットランドにやってきた。イギリスでは2800基以上の洋上風車が回り風力が電源構成の約30%を占めている。中でもスコットランドは再エネ率が約100%と世界屈指の先進地。彼らはスコットランドで漁業者の理解を得るヒントを探す。
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今年6月、輪島の4Gは世界有数の再生可能エネルギー先進地であるイギリス・スコットランドのアバディーンにやってきた。このまちに世界最大級の浮体式洋上風力がある。北海油田の基地港だったアバディーンは今では洋上風力の拠点港に生まれ変わろうとしている。4Gがまず訪れたのは浮体式洋上風力の研究施設。担当者は浮体式洋上風力の誘致に大きな期待を寄せていた。翌朝、4Gは船で現場まで向かう。出港から50分で現場に到着。世界最大級の浮体式洋上風力キンカーディン、海面からの高さ187m、発電容量は5万kW,5基で5万5000世帯分の電力を作ることができる。総重量は約4500万トンだが、海底からチェーンで繋がれ海に浮いている。キンカーディンの5基は2018年に設置され発電を開始した。
世界最大級の浮体式洋上風力キンカーディンが浮かぶスコットランド。開発した企業の技術責任者アランさんは日本にも大きなチャンスがある、スコットランドと同じように海に囲まれていて造船技術もある、浮体式洋上風力のチャンスのスキルも知識もある話す。スコットランドでは日本の大手メーカーが洋上風力の海底ケーブルを作るための工場を建設していて、投資額は約700億円。輪島の4Gを浮体式洋上風力に連れていってくれた男性は、洋上風力で新たに職を得た一人。地元に雇用を生み、大資本も投入されるなどビジネスチャンスとしても注目されるスコットランドの浮体式洋上風力だが、当初は地元の漁師たちは建設に反対していたという。漁業関係者たちは何度も建設側との対話を重ねて、最終的に合意にいたった。スコットランドの漁師たちはたくさんのコミュニケーションが必要だと話す。
再エネ率約100%のスコットランドは地域と再生可能エネルギーが共生する仕組みを作っている。小さな町ハントリーにある陸上風車は住民の積極的な賛成で実現した。スコットランドでは再生可能エネルギー業者に土地の利用を許可する代わりにそこで得られた収入の一部を地域のコミュニティに還元する仕組みが作られている。地域住民はそのお金を地域のために自由に使うことができる。これはコミュニティベネフィットと呼ばれるスコットランド自治政府が作った仕組み。以前のハントリーには娯楽施設は皆無だったが、コミュニティベネフィットで町に様々な恩恵があった。映画館やカフェなどが誕生し、若者が街にとどまるようになったという。ネス湖周辺では景観に配慮し見えない場所に陸上風力が設置された。コミュニティベネフィットで医療センターが解説され、観光案内所が整備されるなどした。
日本では課題も浮き彫りになっている。秋田と千葉で着床式洋上風力の計画を進めていた三菱商事が関税撤退を発表。2021年に落札し、建設に向けた準備が進められてきたがウクライナ情勢や世界的なインフレなどにより資材価格が高騰、コストは入札時の2倍以上になり徹底を余儀なくされた。スコットランド自治政府で洋上風力担当のミシェさんはインフレ下においては政府が強いリーダーシップをとることが大事だと指摘する。気候変動に対処するためにも再生可能エネルギーの歩みを止めてはいけないと訴える。
スコットランド滞在の最終日。4Gたちは会議に出席していた。スコットランドで浮体式洋上風力をすすめた開発業者などと意見交換を行った。4Gたちは実際に見て、輪島でもできるぞという自身を深めた。
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日本で注目の再生可能エネルギー最新事情を紹介。ペロブスカイト太陽電池。従来の太陽光パネルはシリコン製で厚さは数センチで重たいが、ペロブスカイト太陽電池は厚さ1ミリほどで折り曲げが可能。壁や窓などで発電ができ、都市全体が発電所になる。ソーラーシェアリングは農地の上で行う太陽光発電所で自然を壊すことなく太陽光発電ができる。日陰で農作業ができ農作物を高温から守ることもできる。次世代地熱発電。従来の地熱発電は地下に眠る熱水などを掘り当て電気に変えるに発電方法で、熱が溜まっているポイントを掘り当てるのが難しかったが、次世代地熱発電はドイツで熱水などを掘り当てなくても地下の熱を利用できる発電方法を開発中。地熱は時間によって発電量が変わらない。
スコットランドから帰国して1ヵ月、4Gたちは輪島市の漁協に向かっていた。そこには漁協の幹部たちがいた。改めてスコットランドの浮体式洋上風力の説明をしにやってきた。浮体式洋上風力を浮かべると魚が集まるのか調査を行うことになった。
スコットランドでみた浮体式洋上風力について漁業関係者らに4Gが説明をする。風車の建設場所は漁協と相談しながら進めたいという提案をした4Gの輪島を復興させたい、元気にさせたいという思いが漁業関係者の心を動かした。輪島の浮体式洋上風力が大きく前進した。
今月12日、輪島の生みに浮体式洋上風力を建設するとどんな影響が海にあるのか調査が行われたが。建設予定地で生き物たちの様子を1年間にわたりモニタリングし漁業者たちと共有する。浮体式洋上風力誘致への第一歩となった。輪島の4Gはここに吹く風が街を救うという。
エンディング映像。