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かつて、東京の8月の最高気温は30℃前後だった。だが、この20年で気温は高まり、人々の命、暮らしを脅かしつつある。調査を進めると、日本周辺の海で異変が判明。襲来する熱波。命、暮らしの危機にどう向き合っていくべきか。
静岡・掛川市でドクターカーを導入した医療機関を取材した。医師らは県内の高校へと向かうと、40代男性が倒れていた。野球の練習試合で審判を務めていた。水分をこまめに補給していたが、次第に手足がしびれ、嘔吐を繰り返したという。病院に搬送後、直腸から深部体温を計測すると、38.3℃。極度の脱水に全身の筋肉硬直も確認された。冷たい点滴を体内に注入した結果、2時間後に体調が回復した。今年、熱中症の疑いで76500人余りが救急搬送された。屋内が全体の4割を占めていた。聖マリアンナ医科大学病院に入院していた80代の女性も屋内で熱中症を発症。エアコンの作動記録はなく、旦那さんは絶命していた。
熱中症で深部体温が上がり続けると、骨格を支える横紋筋と呼ばれる筋肉が壊死する。その成分が血液中に流れ込み、腎臓の働きを阻害する。中枢神経に障害が残り、歩行が困難になることもあるという。
横堀將司教授は通報から救急車が到着するまで10分ほどかかり、深部体温を上げないようしっかりとした冷却が必要と語った。アイスバス、アイスタオル法、血液の流れが多い首や足の付け根などを冷やすべきだという。高血圧、糖尿病、高齢者は熱中症が重症化しやすく、より注意が必要。
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- 日本医科大学付属病院深部体温熱中症
初島にあるダイビングショップで働く小林直矢氏はここ数年、グルクン、アカハタ、クマノミなどを発見した。南の海域に生息しているはずで、海水温の上昇を感じるという。
中村尚教授らの研究グループは海洋熱波が猛暑をもたらす仕組みに関する論文を発表した。北日本の海では夏場でも海水温が比較的冷たい状態にあり、下層雲という低い雲、霧が発生する。下層雲は天然の日除けを果たすが、海洋熱波が起きると下層雲が減少し、海水温の上昇につながる。23年は北日本で海洋熱波が起きたが、今年はより広範囲だという。海洋研究開発機構の美山透氏は黒潮の異変に注目していて、昨年、暖流の極端な北上が判明し、東北沖にまで達していた。
日本近海は温暖化のペースが早く、日本の夏は亜熱帯化しているという。横堀將司教授はデング熱、マラリアなどが蔓延する可能性を指摘した。また、海洋熱波などで台風は強い勢力が保たれるといい、中村尚教授は日本に近づきつつある台風10号について、「上陸直前まで発達を続けるかも」と語った。
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- 台風10号日本医科大学付属病院
災害級の暑さは野菜の生育に影響を及ぼし、食卓を脅かす事態となっている。
46年にわたって新潟でコシヒカリをつくり続けてきた関隆氏は猛暑、水不足により、田んぼが砂漠化したと振り返った。栽培に成功しても、粒が白く濁り、2等米と判断され、昨年、1000万円の減収となった。そこで、新潟県は需要のあるコシヒカリの供給を維持しながら、新たなブランド米を定着させることに。米農家の青木拓也氏は暑さに強い「真之助」に注目した他、稲の生育状況を可視化するアプリを導入した。乳牛は気温が17℃を超えるとストレスを感じ、酷暑による体力低下で卵巣の機能低下が懸念される。牛は出産によって初めて乳を出す。繁殖に支障をきたすと、牛乳の生産に影響を及ぼす。23年、確認されているだけで88頭が熱中症で絶命した。
23年、北海道では生乳の生産が前年比で2万トン以上も減った。新得町の牧場では保冷剤を入れたネッククーラーを子牛に装着した。士幌町の牧場は900万円を投じてエアコンを設置し、内部の温度を14℃にキープしている。
中村教授は災害級の暑さで農業にも影響を及ぼしているなどと語った。国連のグテーレス事務総長は「法律、規制がこの酷暑の現実を反映し、実行されなければならない」などと主張した。
今年、葛飾区では25の小学校で屋外プールの使用をやめた。民間のスポーツ施設などの屋内プールを利用し、予算を投じて新たな屋内プールを建設するといった計画も進行している。
山形・米沢市の中学校では熱中症のリスク判定を行うAIカメラを導入している。生徒たちは暑さに対する意識を日課にしていた。
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- 米沢市(山形)
中村尚教授は「暑さにしろ、大雨、台風にしろ、我々が持っていた常識が通用しない時代に入ってきている」と話す。グテーレス事務総長は「働く人々を酷暑から守るため、法律や規制が必要」と訴えている。
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ギリシャでは暑さによって業務停止命令が出されることがあり、違反した事業者には罰金が課される。6、7月で7日間、発令された。
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- ギリシャ
中村尚教授によると、海面水温が1℃上がるだけで著明な影響があり、地球温暖化を少しでも緩和するような対策が求められるという。気象庁の三ヶ月予報によると、秋も暑さが続く見込み。横堀將司教授は「熱中症は予防できる災害、病気。1人1人が自己管理をしていただきたい」などと語った。正しい情報を発信できるような仕組みづくりも求められるという。
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