礼文島では漁業に被害をもたらすトドを漁師自ら駆除している。島には半世紀にわたりトド撃ちをしてきた男がいた。

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トドの駆除は水産庁の事業で頭数を制限して行われている。静夫さんはトドを苦しめないよう銃は3発しか使わないという。漁師たちは神業だと話した。今は無人となったトド島で9人兄妹の長男に生まれた静夫さんは12歳で漁を始めた。冬の礼文島ではトドが貴重な食料だった。

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トドはサハリンから冬を越すためにやってくる。トドによる漁業被害は礼文島だけで毎年1億円を超える。トドが編みの中の魚を頻繁に食べるようになったのはこの30年のこと。静夫さんはすべて人間が悪い、昔は海が豊富だったからトドが網を破ることはなかったと話した。しとめたトドに胎児がいた時、静夫さんはそのはく製を作っている。

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1979年に収束するまで礼文島ではエキノコックスが流行り、感染拡大を防ぐためすべてのキツネ、イヌ、ネコが駆除された。静夫さんは命をとるのは眠るごとくとりたいという感情は常に心の中にあると話した。

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静夫さんは去年進行した肺がんと診断されたが、海の仕事を続けるため手術を断っていた。トドの肉は今も礼文島の家庭料理として親しまれている。生き物を殺しているところがテレビに映ったことで静夫さんのもとには苦情が来たこともあり「生活や商売のために駆除しているんだ」「あなた方が商売や生活を守ってくれるのか」と言ったという。6月になるとトドは繁殖地のサハリンに帰る。

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静夫さんはその後静かに亡くなった。医師は迫りくる死に対して抗うことなく受け入れていたと話した。静夫さんは30年にわたりトドの調査研究に協力していた。しとめたトドの頭骨が大学に保管されている。常に海の状況を考えていた静夫さんは、トドの来遊が激減した年には心配もしていた。漁業的にはトドがいないほうがいいが、海獣たちが来るのは豊かな海の象徴でもあると考えていた。

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