- 出演者
- 井上二郎
企業に対して様々な要求を突きつけるモノ言う株主が、かつてない影響をふるい始めている。モノ言う株主と日本企業の攻防を追った。
2年前にダルトン・インベストメンツの幹部に就任した西田氏は、フジ・メディア・ホールディングスとの攻防を仕掛けた。ダルトンがフジ・メディア・ホールディングスの株を買い始めたのは2年前。西田氏が割安とされていたフジの株に目を付け、今や7%を保有する大株主となっている。西田氏はフジの株価が下落していた今年1月にレターを送った。ダルトンは第三者委員会の設置やカメラを入れた記者会見などを立て続けに要求した。株価は上昇し、問題が起きる前の1.5倍以上の高値を記録した。西田氏は自分たちが選んだフジ外部の人物を取締役として送り込もうと提案し、スピーディーな改革を実現すると訴えた。日本では2000年代初頭に村上ファンドが登場し、モノ言う株主が注目された。モノ言う株主は様々な要求や改革を企業に迫ることで株価を高め、利益を得ようとするようになった。批判的な声も多かったが、アベノミクスで企業に株主と積極的に対話し意見に耳を傾けることが求められるようになった。西田氏は今月半ばに液晶パネルの製造装置などを手掛ける企業の新たな取締役に就任していた。企業側は西田氏の知見を活かして他の企業を買収し、新事業に進出することで企業価値を高めようとしていた。株主総会まで40日、フジ側は独自に11人の取締役候補を発表した。会社の歴史上初めて取締役の過半数を外部から登用し、清水社長を含むフジ社内の5人の名前が挙げられていた。ダルトンに迫る株を保有するレオス・キャピタルワークスの藤野社長は、どの候補者に賛成するか決めかねていた。メディアの実業に詳しい人を訪ね、判断材料を集めた。一方西田氏は、連日株主に連絡をとり、自分たちの経営改革案を説明していた。結果、フジ案には8割が賛成し全て可決。ダルトン案は賛成が3割に届かず否決された。フジ・メディア・ホールディングスの株価は、株主総会後も上昇を続けている。
フジの株主総会について、冨山和彦氏はこれから長期的にどうこの会社が成長していくのかが大事と話した。労働者と企業の関係を研究している首藤教授は、経営不安のすきをついて投資に押しかけていく戦略が企業統治として本当に健全なのかは考える必要がある、問題はモノ言えぬ現場にあると話した。国・東証による改革によって企業と株主に対話を促したことで、モノ言う株主がお墨付きを得た形。今年の株主総会でモノ言う株主の提案数は過去最多の137議案にのぼった。冨山氏は、会社は重要な意思決定のときに取締役や経営者を株主が投票で選ぶ仕組み担になっているが、日本の場合は過去そうなっていなかった、機能していなかったので外部からの緊張が働くようにしたのが一連のガバナンス改革の流れと話した。
アメリカに拠点を置く投資ファンド、カナメ・キャピタルのトビー・ローズ最高投資責任者は、日々株を保有するの企業を訪ねては改善策を提案している。企業への働き方を進める手法を特別に明かした。そこには友好的な対話を、企業の出方次第で非友好的なものに変えていくプロセスが記されていた。最終的には株主代表訴訟で経営陣を訴えるなど、司法の力で要求の実現を目指すこともあるという。経営に問題があるとして実際に裁判を起こしたケースもある。
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太陽ホールディングスの佐藤社長は、就任して14年で営業利益は4倍となり過去最高益を達成したにも関わらず、大株主のオアシス・マネジメントに社長解任を提案された。最高投資責任者のセス・フィッシャー氏は、佐藤社長にはガバナンスに関する違反があった、社長を辞め会社を去るべきと考えていると話した。佐藤氏が社長になってから参入した医療医薬品事業について、企業価値を破壊すると強い言葉で批判した。利益率が低く、オアシスは医薬品事業の見直しを要求したが、佐藤氏から納得のいく回答は得られなかったとしている。佐藤氏は半導体関連事業の売上は海外が9割以上を占めるが国際情勢の不確実性が増しており、国内がメインの医薬品事業はリスクの分散につながるとみていた。佐藤氏は株主総会ギリギリまで株主のもとをめぐり、医薬品事業の改善案を説明していた。結果、続投に賛成は46.09%で社長の座を退くことになった。
首藤教授は、株主は重要なステークホルダーだが株主の意向は企業の長期的な価値と必ずしも一致しないと話した。冨山氏は、機関投資家は成績がリターンを時間で割ったもので計られるので悠長に言ってられない、時間軸の矛盾は必ず起きるが資本民主主義を否定してしまうと外部からのチェックが働かない、まず稼ぐ力がないとその次にいけない、そこをクリアすればアクティビストに突っ込まれる余地はなくなると話した。
大正製薬は去年、上場企業としての歴史に終止符を打った。創業家が代表を務める会社が約7000億円をかけてほぼすべての株式を取得し、上場廃止が決まった。非上場化したことで大規模な資金調達はできなくなったが、モノ言う株主の介入を受けるリスクから解放された。非上場化の動きは急速に広がっており、去年東京証券取引所で上場を廃止した企業は過去最多の94社にのぼった。約2600人が働くIT通信機器の会社は、去年同じ業界の会社との経営統合を打ち出した。モノ言う株主の力が強まる中、安定した経営基盤を手にすることが必要と考えたという。
首藤教授は、資本の論理だけで経営がなされることには危うさを感じる、適切に変化はしていかないといけないがステークホルダーに説明をしてプロセスのほうが大事と話した。冨山氏は資本民主主義という仕組みをどうしたたかに使い尽くすか、会社の長期的成長のために必要なことなら外圧をうまく使えばいいと話した。
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