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オープニング映像。
「命を救った子どもが、将来、誰かを救うかもしれない」と話す黒澤寛史医師を取材した。
- キーワード
- ブラック・ジャック
兵庫県立こども病院のPICU(小児集中治療室)では重い病気を抱える15歳未満の子どもが治療を受けている。医師は19人、看護スタッフが97人、ベッドは27床。取材中、生後28日のりあちゃんが搬送されてきた。心臓に2ヵ所の穴があり、肺に血液が流れすぎていることが分かった。心臓の手術に臨むために術前の体調をどれだけ整えられるか、チームで情報が共有された。1mmの薬量、1cmの器具のズレさえ、死に直結しうるという。
黒澤寛史医師はオーストラリア・メルボルンの病院に勤務していた頃、リスク評価が甘く、患者だった子どもの状態が悪化し、亡くなってしまったという。日本で小児集中治療の経験を積み、兵庫県立こども病院でPICUを設立した。黒澤医師は「基本、サボりがちなんですが、子ども相手ならサボりそうになった時も頑張れる。子どもは無条件に助けてあげたくなる」と話す。りあちゃんは無事に心臓の手術に臨み、7時間の手術を乗り切った。さらに黒澤氏が気にかけていたのは8歳のゆうだい君。脳出血に伴って緊急手術が行われたが、母親に言語障害が残る可能性が告げられた。
黒澤医師は患者だけでなく、親御さんのケアも重視している。日本に小児集中治療医は230人しかおらず、PICUも全国に35ヵ所。30年以上に渡ってPICUに携わる中川聡医師は「今よりも最低でも倍、可能であれば3倍ぐらいはあると」と話す。黒澤医師は病院勤務の合間を縫い、大学などに出向き、PICUの重要性を説いている。ただ、PICUでも救えない命はあり、兵庫県立こども病院では10人が亡くなった。
緊急手術から4カ月後、8歳のゆうだい君の脳には後遺症が残った。両親は弟たちの声を聞きながら生活するほうが回復に繋がると考え、退院を決意した。黒澤医師は「ある程度、距離は保とうとしている。そうしないとこの仕事、続けられないかもしれない」、「心のバランスをとるため、近づきすぎないようにしている」などと語った。取材中、黒澤医師の技術を学ぶため、千葉県から1人の医師がやってきた。ICUに勤務し、重症の子どもを治療することがほとんどないからだという。心臓の穴を塞ぐ手術を受けたりあちゃんの経過は順調で、春から保育園に通っている。黒澤医師は「ブラック・ジャック」で救われた子どもが将来、アメリカ大統領になるエピソードを話した。
「NNNドキュメント’23」の次回予告。