働き方改革で労働時間の削減が進んでいるのにも関わらず、心の不調を訴える人が相次いでいる。中には命を失う人も。過労死防止法が成立したのが2014年で、2018年には働き方改革関連法が成立した。結果、10年前と比べて1か月の労働時間が平均で6時間減少した。大手食品メーカーの30代男性は、うつ病と診断され休職した。業務量を変えずに残業時間を削減するよう指示された。男性は休憩・仮眠時間を削り、配送中に事故を起こしそうになったこともあった。労働時間に上限が設けられても、形ばかりの実態も見えてきた。グラフィックデザイナーだった当時40代の男性は、5年前に自ら命を絶った。小規模な広告代理店に勤め、広告制作をひとりでこなしていた。男性は午後8時までに仕事を終えるよう指示されたが、隠れ残業を余儀なくされた。妻に送られてくるメッセージには、男性が次第に追い込まれていく様子が残されていた。亡くなる前、時間外労働は3か月連続100時間を超え、うつ病発症による過労死と認定された。専門家は、人手不足がより深刻な中小企業ほど働き方改革を進めるのが難しいと指摘する。労働政策を削るだけの改革では過密労働や隠れ残業によって勤務実態や健康状態が見えづらくなる恐れがある。