エンジン開発という果てなき戦い。黒須はわからないなりに開発すると決めた。田村もどんな事態になっても次の改良案だけを考え続ける心に決めた。開発のさなか母・突然の病で亡くなった。黒須、田村、本村たちは振動を抑え込む最後の作戦を考えた。名付けて「4本の矢」。0の矢は現状のマイナーチェンジ。1の矢は本命。2の矢は設計を大きく変更。3の矢も設計を大きく変更。無理なスケジュールを工場に持ち込み、絶句されたのは本村の上司・三原礼だった。それぞれの矢を試す燃焼試験が始まった。0の矢は折れた。1の矢も折れた。2の矢、3の矢は設計に1年はかかる。黒須らは打てる手を試し続けた。59回目の燃焼試験で上手く行った。この時試したのは0の矢と1の矢に工夫をこらした案だった。打上への最終段階。メインエンジンを機体に取り付け、だいち3号がロケットの最上部に格納された。2023年3月7日、H3ロケットは天空に舞い上がった。しかし絶対の信頼を誇る第二エンジンが着火しなかった。