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「アメリカ国防総省」 のテレビ露出情報

1945年、当時26歳のロバート・マクナマラは陸軍の統計管理局で太平洋戦争を指揮していた。ハーバード大学院を卒業後、最年少で助教授となった経歴を持つマクナマラはその明晰な頭脳を活かして1つの作戦を提案する。それは、低コストかつ安全、効率的に日本を攻撃するため、高度1万mを飛行できるB-29で無差別爆撃を行うというものだった。マクナマラによるこの提案は効果を発揮し、爆撃機の損失率は1%台にまで減少。その一方で、日本では46万の一般市民が犠牲となった。
戦争終結の翌年、マクナマラは陸軍のエリートと共に自動車メーカーのフォードに入社する。マクナマラとその友人は低迷していたフォードを立て直すために徹底的な市場調査を実施し、需要が高まっていた大衆車に目をつける。製造過程を見直し、コストを圧縮することで低価格化を実現した大衆車「ファルコン」はマクナマラの分析通り大ヒットを記録した。数々の功績を残したマクナマラは1960年にフォード社の社長に抜擢されるが、それから程なくして政権中枢から呼び出しを受ける。大統領のジョン・F・ケネディがマクナマラの鮮やかな分析手腕に惚れ込み、国防長官の職を用意して政権入りを打診してきたのだ。マクナマラはこの誘いに応じ、ペンタゴンで働くこととなる。
東西冷戦の最中にあった当時、米ソは世界各地で代理戦争を繰り広げていた。その戦いの新たな舞台となったのが東南アジアの小国・ベトナム。ベトナムは元々フランスの植民地だったが、第二次世界大戦の終結後にホー・チ・ミンが北側に社会主義国家である北ベトナムを建国して独立を宣言。これを認めないフランスは南ベトナムを支配して対抗し、1946年にはインドシナ戦争が勃発。この戦争では北ベトナムが勝利したが、アジアの共産化を警戒したアメリカは南北ベトナムの戦いに介入を決定する。介入の指揮を執ることになったマクナマラは短期での北ベトナム制圧を目論み、軍事顧問団として派兵していた米軍の規模を1万人にまで拡大。南ベトナムには大量の米兵が駐屯するようになり、街中には歓楽街が出現。こうした状況を黙認していたゴ・ディン・ジェム政権に対する抗議として、仏教徒の1人が焼身自殺する事態を招く。ジェム政権が国民から支持を得られていないことを悟ったマクナマラは南ベトナムから撤退するようケネディに具申するが、その矢先にケネディは凶弾に倒れてしまう。
ケネディの後継者となったジョンソン副大統領はマクナマラの撤退案を白紙に戻す。こうしてマクナマラは自らの意に反しながらもジョンソンの方針に従うこととなった。1964年8月、マクナマラは「公海上の米軍艦艇が北ベトナム軍から攻撃を受けた」とする声明を発表。しかし、この情報はベトナムへの本格介入を正当化するために作り上げられたものだった。1965年2月には北爆が開始され、同年末には20万の兵士がベトナムへと送り込まれていく。戦いの規模が一気に拡大していく中、マクナマラは敵兵の死者数を利用して戦況を理解しようと考える。米兵が1人死ぬまでに10人の敵兵が死亡すれば戦争に勝てるという理論の下、米軍は連日殺した敵兵の死体を数え続けた。
しかし、北ベトナム側で戦っていたのは軍人だけではなかった。死をも恐れぬ愛国心の下、北ベトナムでは農民や市民たちがゲリラ戦を展開し米軍を迎え撃つ。味方であるはずの南側にも南ベトナム解放民族戦線、「ベトコン」という敵対勢力が出現し、ジャングルに仕掛けたブービートラップで米兵たちを苦しめた。米軍は独自にゲリラ戦を研究して対抗したが、対処法を学ぶ度に新たな戦術が生まれるイタチごっことなり、脱走兵が続出した。こうした中でもマクナマラは敵兵の死者数にこだわり続け、米軍はさらに攻撃をエスカレートさせていく。より多くの死者を出すことが奨励される中で米兵達は徐々に正気を失い、一般市民の虐殺などが相次いだ。苛烈な攻撃が続く中で「米兵1人が死ぬまでに敵兵10人を殺す」という当初の目標は次々と達成され、ある部隊では米兵1人が死ぬまでに45人の敵兵を殺したこともあったいう。
目標としていた数値を達成しているにも関わらず好転しない戦況を前に、マクナマラは自らの計算が間違っているのではないかと考えるようになる。ベトナムに駐留していた調査員のダニエル・エルズバーグに自らの疑念を相談したマクナマラは、「状況は1年前と状況は全く同じです」という報告を受け、自身の失敗を確信。マクナマラはこれを機にベトナムからの撤退を模索するが、ジョンソン大統領がその進言を受け入れることはなかった。政権がベトナムからの撤退を認めない以上、マクナマラは戦争継続のためにメディアの前で嘘をつくことしかできなかった。
1968年1月30日、ベトナムにおける情勢は一変する。この日、北ベトナムと南ベトナムに潜むゲリラ部隊が一斉に蜂起し、南ベトナムのサイゴンにあったアメリカ大使館を占拠したのである。その様子は全世界にテレビ中継され、アメリカ国民に衝撃を与える。さらに、解放戦線の兵士が射殺される映像も中継されたことで、ベトナム戦争における正義そのものがゆらぎ始めた。これを機に世界各国のメディアは現地取材を行い、アメリカ政府の嘘を暴いていくことになる。こうした報道はアメリカ各地で反戦運動を巻き起こし、開戦時に60%あった戦争支持率は30%を割り込むほどに低下。メディアの前で嘘をつき続けていたマクナマラは激しい批判を浴び、テレビの討論番組で自身の失敗を認めることを余儀なくされる。それから3か月後にマクナマラは国防長官を退任し、7年間にわたる仕事を終えた。
マクナマラの退任から3年後、アメリカ国内で衝撃的な事件が発生した。ベトナム戦争における機密情報を700ページにわたって記した機密文書、「ペンタゴン・ペーパーズ」が何者かによって盗まれ、新聞社にリークされたのである。これらの文書は国防長官時代のマクナマラが作成を命じていたもので、リークしたのはマクナマラが相談を持ちかけた調査員のダニエル・エルズバーグだった。「ペンタゴン・ペーパーズ」のリークによってアメリカ政府の嘘が暴露されたことで反戦運動はさらに過熱し、1973年に政府はベトナムからの撤退を決断。その2年後、アメリカの後ろ盾を失った南ベトナム政府は降伏し、社会主義政権によって南北ベトナムは統一を果たす。6万人のアメリカ兵と300万人のベトナム人が犠牲となったベトナム戦争は、北ベトナムの勝利で幕を閉じたのである。
戦争終結から20年後の1995年11月、79歳になったマクナマラは再びベトナムを訪れる。かつて北ベトナム軍の司令官としてゲリラ戦を指揮したボー・グエン・ザップ将軍と対話を果たしたマクナマラは、1つの疑問を投げかけた。「なぜ、ベトナムはあれほど多くの犠牲者を出しながらも和平交渉に応じなかったのか?」。ザップ将軍は「我々ベトナム人は抗い、戦わなければならなかった。必要であれば私達は100年でも戦うつもりでした。我々にとって、自由と独立ほど尊いものはないからです」と答えたが、マクナマラは最後までその言葉に納得しなかったという。「分析の天才」と呼ばれたマクナマラは2009年に世を去ったが、彼の失敗は現在に至るまで「マクナマラの誤謬」という言葉に残されている。この言葉を生み出した社会学者、ヤンケロビッチはマクナマラの失敗について次のように評した。「マクナマラの数字第一の戦略は、アメリカの政策を正しく導けませんでした。計測できるものは計測して、計測できないものは忘れようと考えるのは致命的な失敗への第一歩なのです」。

他にもこんな番組で紹介されています…

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2025年1月23日放送 23:50 - 0:35 NHK総合
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