避難生活での課題に仮設住宅の大幅な不足による避難生活の長期化がある。この問題の解決に向けて取り組んでいるのが愛知県・名古屋工業大学。敷地内には不思議な形をした真っ白な簡易住宅「インスタントハウス」がある。空気を送り込んで膨らませたテントシート内部に断熱材として使われる発泡ウレタンを吹き付ける。最短1時間で完成し、耐久性・断熱性にも優れているという。開発したのは建築デザインなどが専門の北川啓介教授。能登半島地震発生後、現地に駆けつけてインスタントハウスの建設を進めている。作業中の北川さんに話を聞いた。避難生活による健康状態の悪化が原因で亡くなる「災害関連死」も懸念される中、急ピッチで建設を続ける北川さん。被災者から言われた「家が怖い」という言葉が忘れられないそうで、「私が専門で建物を作っていくことを大事にしているのに、皆さん(元日の)記憶も余震があると蘇ってしまう。その時に家が人を襲ってくる、家が怖いと言うんです。それは凄く悔しい」と話す。「少しでも安全で快適に避難生活を送ってほしい」という思いを胸に現在、輪島市・珠洲市などで145棟の設置が完了している「インスタントハウス」。この開発のきっかけとなったのは13年前の東日本大震災。小学生の子供達に「仮設住宅が建つまでなんで3カ月~6カ月もかかるの?大学の先生だたら来週建ててよ」と言われ、「彼らの言葉をきっかけにこういうものを作ろうと思った」という。その後9年の歳月をかけ「インスタントハウス」を開発。いま被災地ではなくてはならない存在となっている。