海鳥のおなかにつけたカメラで撮影された映像を紹介。人が行くことが難しい海の中や空などでの生き物の生態を研究するためのもの。こうした調査の方法は「バイオロギング」といわれ、計測機器を生物の体につけて、生物がどういう動きをしているのか、映像のほか、位置情報、温度など周辺の環境データを集めて調べる。この知られざる生態に迫るバイオロギング研究を取材。東京大学大気海洋研究所・佐藤克文教授。分かっていないことが多い海での生態を、バイオロギングで解明しようとしてきた。ウミガメは海の中でどのように過ごしているのか、誤って定置網などにかかってしまったウミガメに記録装置を取り付け、岩手県釜石市の港から放流。3日後の朝4時、ウミガメから切り離された記録装置の位置を確認。宮城県気仙沼市の沖合にあると分かり回収する。記録装置には12時間ほどの映像が収録されていた。佐藤教授によると、アカウミガメは従来、ふんの調査などで主にウニや貝など海底生物を食べていると考えられていた。しかし、三陸沖での20年に渡るバイオロギングでの調査の結果、沖合ではクラゲを多く食べていることや、300メートル以上潜水することが見えてきた。バイオロギングによる生態調査は、サケの資源管理のためにも行われている。水産研究教育機構では、20年以上前から毎年夏にベーリング海でサケに計測器をつけて放流している。ことし夏、サケ69匹に計測器をつけて放流。来年秋以降の回収を目指す。サケの生態とともに、海の状況が見えてくると、海水温の上昇が不漁に影響しているのか、分かるのではと期待されている。佐藤教授は「計測機器の進化などによって、生態だけでなく、ほかの分野にも重要なデータになることがわかってきた。人間が構築してきた観測網と補い合うような形で、気象予測などにも貢献できるのでは」という。