イギリス王室専用列車が経費削減を理由に2027年までに引退することになった。そのカギを握るのがソブリン・グラント(王室助成金)。王室に関わる様々な経費は税金を財源として助成金で賄っている。先月発表された年次報告書によると、その額は年間8630万ポンド(約170億円)。王室が使った費用は年次報告として事細かく使い道が公開されている。詳細をオープンにするきっかけとなったのは1992年11月20日、エリザベス女王45回目の結婚記念日に起きたウィンザー城での大規模火災。礼拝堂のカーテンが古い型のランプに触れて発火。30km以上離れたバッキンガム宮殿から駆けつけた女王は光景を見て立ち尽くしていたという。ウィンザー城の修復費用は約70億円で、政府は税金で賄うと発表した。この年の9月、ポンドの為替レートが急落し、イギリスはポンド危機に見舞われていた。経済的混乱の中での政府の発表に国民からは不満の声が噴出した。火災から4日、即位40周年の式典に臨んだエリザベス女王は「税金を払います」と述べ、それまで免除されていた所得税を支払うと公言。それは王室の規模縮小と経費削減の始まりだった。女王は父や夫との思い出がたくさん詰まった大切なものまで手放すことを決意した。