2021年8月、アフガニスタン・カブールはイスラム原理主義組織タリバンの手に落ち、国外に脱出を図ろうとする国民で溢れかえっていた。難民の多くがパキスタンに流れ込み、首都イスラマバードの商業地区では一際賑わいを見せる場があった。通称「アフガン・ストリート」には戦火を逃れてきたアフガニスタンの人々が小さなコミュニティーを構築して生計を立てている。アフガニスタンの伝統的なファストフードの店を経営する男性は約2年前にタリバンの実効支配から逃れるために一家揃ってパキスタンにやってきていた。女性用ドレスの販売店を営む男性はアフガニスタンで店を開いていたがタリバンから閉鎖を命じられたという。郊外・住宅街の一角にアフガニスタン難民学校があり、自身も難民である教師が子どもたちに教えている。教室に隣接するアパートの一室で一家と生活している女性は夫がタリバンに命を狙われたことをきっかけにパキスタンへ逃れてきていた。女性の夫はアフガニスタンで警察官をしていたが、タリバンが政権を握ってから同僚たちが殺されるのを目の当たりにしてきたなどと明かした。女性一家はパンを売りながら難民学校の運営を担っている。女性一家の退避を手助けしたのは世界各地で紛争解決に取り組んでいる認定NPO法人「REALs」の理事長である瀬谷であった。瀬谷は過去に外交官として紛争地で武装解除の任務に携わり、これまでの人脈や経験を活かしてアフガニスタンの人々を先進国に受け入れてもらうように折衝を重ねてきた。「REALs」は313人のアフガニスタン人を国外退避させ、1500人以上に食糧や医療等の生活支援を行ってきた。そのうち90人がドイツ、57人が日本へ難民として生活していて、今なお日常的に瀬谷のもとに助けを求める声が相次いでいる。