東京大学の國吉康夫さんは「知能についてどこから生まれるのか、ロボットを作ることを通して研究している。」などと話す。マサチューセッツ工科大学のブルキット・アグラワルさんは「私はドリブルが上手なロボットを作りたいわけではない。これは『身体的な知能』を研究する足がかり。ロボットにとってドリブルはどれほど難しいか?まず前に進むだけでなくバランスを保ちながら向きを変え、ボールが飛びすぎないように適切な力を加えねばなりません。さらにそれだけなら簡単でも芝生・雪・砂利など様々な地面に合わせた制御も求められる。地形が変化すると足やボールの動きが変わる。現実世界は複雑。言葉では表せない。現実世界でドリブルするために我々は4000台ものロボットでシミュレーションした。人間に換算すると6~9ヶ月。ご飯も食べずシャワーも浴びず、眠らずに、ひたすらドリブルだけ練習させた。ロボットがドリブルするにはそれだけの練習が必要。我々が目指すべきは『強靭な知能』。強靭な知能とはどんな地面やボールであってもたとえ蹴り倒されてもきちんと動かなければならない。複雑な世界に『適応』しないといけない。」などと述べた。カリフォルニア大学バークレー校のアレハンドロ・エスコントレラさんは「現実では何かあっても自分で立ち上がらないといけない。これは簡単にはシミュレーションできない。『実世界』で学ぶことも大事。これは一切の事前学習を行わず自分の体だけで学ぶロボット。ロボットに与える指示は『前に進むとプラス1』、転ぶと『マイナス1』だけ。なのにまるで子鹿のように自ら立ち上がり歩き始める。現時点では何も学んでいない。しかし脚を動かすと何が起きるか世界は探索している。(30分後)立ち上がれたがまだ歩けない。足の摩擦に苦戦している。一步進んでは地面にひっかかり後ろに押し戻されている。でも足と地面の関わりを理解しようとしている。前に一步踏み出すための方法を学んでいる。手助けしたいが今は自分で頑張る時。」などと述べた。60分後、ロボットは自分で歩けるようになった。さらに横から蹴り倒されてもまた立ち上がり歩き始める。アレハンドロ・エスコントレラさんは「世界には何一つ確実なことはない。こうした学習を行うことで予期せぬことに満ちた世界を乗り越えられる。どんなことにも対応できる『強靭さ』が身につく。」などと述べた。國吉さんは「真の知能とは体を通して生まれる。それは人間だって同じ。人の知能が形作られる最初のところが我々のフロンティア。ヒト胎児のシミュレーター、子宮のモデル。皮膚上に触覚点が配置されていて、子宮との衝突で生まれる接触であったり、触覚が反応すると光るようになっている。動くと全身で感じる。その情報を脳のモデルに入れて学習させていく。子宮内であれば羊水の抵抗を受けながら連続的に動いていく。それが脳の神経の発達を引き起こし、入ってくる情報のパターンを学習していく。体のマップのようなものができ、体の各部が脳の違う場所に表現されている。ただ子宮外で育てたという想定の実験を刷ると途切れ途切れになって不形成になっている。空気中で平たいベッドで学習させた。空気中を運動しているときはほどんど触覚の刺激は入らない。そういう環境の違いが初期の身体マップ獲得の違いをもたらしている。動くことで自分の体を通した情報を得ることが大事で、脳の最初の基盤を作る。『BODY SHAPES BRIAN』という言い方をしている。身体が脳を作る。『知能の芽生え』という意味では身体に関する認知が形成され始めるときが知能の芽生えだと思っている。自分の体が分かるとそれを参照しながら自分じゃないものが分かるようになる。相手と自分が同じ体の形をしていて、真似の基盤にもなる。それから色々なものの理解が進み言葉の獲得にもつながる。知能って『宇宙に生えたキノコ』だと思っている。情報の源は宇宙にあるというか自然界にあるというか、それを身体を通して吸い上げていくのが知能の姿。実際の世界がはらんでいるリッチな情報がキノコが木に生えて養分を取ってカサを作っていくようなイメージで情報が凝縮すて形を成していくものではないかと。なので身体を無視して知能を語ることはできない。」などと述べた。