天皇杯で優勝し、ACLへの参加を決めたヴァンフォーレ甲府。クラブにとって初めての国際大会の準備をすることになった植松史敏は自ら費用を負担して英会話レッスンに励んでいた。ヴァンフォーレのスタッフは20人程度しかいないため、植松は普段のチーム運営に加えてAFCとの調整や海外渡航手続きなどの業務に追われていた。8月24日、植松はクアラルンプールでの抽選会に参加。チームの初戦はメルボルンで行われることが決まったが、スケジュール調整や対戦相手の情報収集などすべきことは山積み状態だ。選手たちも試合に向けて緊張感を高めていく中、キャプテンの関口はさらなる成長を目指して闘志を燃やしていた。
9月、サポーターに見送られてメルボルンへと旅立ったヴァンフォーレ甲府は会場となるメルボルン・レクタンギュラー・スタジアムに到着。試合前日に植松は運営の最終確認を行い、街ではサポーターたちが決起集会を開催していた。そして迎えた試合当日、メルボルンシティと対戦することになったヴァンフォーレは序盤から果敢に攻め込むも0-0で引き分け。関口はサポーターに礼を述べて初戦を終えた。第2戦は日本での開催となったが、ACLの規定によりホームスタジアムでの開催ができず国立競技場を利用することに。しかし、高額の利用料は小規模なヴァンフォーレ甲府にとっては大きな負担。試合日は平日ということもあってチケット収入も期待できない状況だったが、収入確保のため動員数1万人を目指すことに。
1万人の動員を目指し、ヴァンフォーレは集客ターゲットをJリーグの全サポーターに拡大。この声に応え、ブリーラムとの対戦には数多くのJリーグサポーターが集結。試合は1-0でヴァンフォーレの初勝利となり、国立競技場は大きく湧いた。この日の入場者は11802人を記録し、目標の動員数1万人もクリア。ヴァンフォーレはこうして歴史的な勝利を果たした。