アフリカ大陸南部ジンバブエ共和国。雄大な自然に抱かれ、多くの野生動物が生息する国だが、その動物たちの命を狙う密猟があとを絶たない。そうした密猟者と闘い動物を守るのがレンジャーという職業。武装した密猟者や犯罪組織と対峙するため世界で最も危険な職業の1つとされている。殉職者は年間100人を超えることも。かつては男性だけの仕事と言われてきた。この国で初めて誕生した女性レンジャー部隊の一員ワザナイさん。レンジャーになる前、夫からの度重なる暴力に苦しめられてきた。国連の調査では、南部アフリカの一部の国々で9割を超える人が女性への暴力は容認されるなどの誤った認識を持っているほか、半数以上が女性より男性の方が優れた経営者になれるなどと認識していて、性差による偏見=ジェンダーバイアスが今も根強く残っている。こうした差別や偏見を払拭するために始まったのが女性レンジャーの育成だった。集められたのはDVや性暴力のサバイバーたち。部隊を発足させたダミアンさんは、過酷な訓練をものともしない女性の姿に衝撃を受けたという。メンバーは現在600人に増え、2017年の発足以来、地域の密猟を80%減らすことに成功。レンジャーとして自立し、抑圧から解放されたワザナイさん。今は3人の子供を育てながら60人の部下を率いている。変化は、それだけではない。彼女たちの存在が示したもの、それは差別や偏見のない未来への希望だった。