日本経済新聞・小竹洋之さんの解説。「欧州なお極右ブーム・社会変化への不安くすぶる」日本経済新聞11面(7月10日付)記事紹介。小川さんは「6月のヨーロッパの議会選挙、フランスの選挙で極右政党の存在感が増しています。フランスでは7月7日に国民議会選挙の決選投票があり、マクロン大統領率いる中道の与党連合が第2勢力に後退して、左派連合が最大勢力に浮上しました。事前の世論調査では、ルペン氏が率いる極右政党が最大勢力になるのではと言われていましたが、第3戦力にとどまったことで安堵が広がりました。ヨーロッパの極右ブームは続きそうですね。既成政党が掬いきれない有権者の声を、極左より極右の方が拾っていることになります。ヨーロッパでポピュリズムと言われる政党が政権に加わる国家数は、3月時点で8か国で、極右政党が政権を握っているハンガリー、イタリアなどが含まれています。2019年はピークで、15カ国ありました。オランダでは極右主導の連立政権が発足したばかりで、オーストリアは9月に総選挙があり、極右主導の政権になる可能性があります。政権に加わっていない国々ではフランス・国民連合、ドイツ・ドイツのための選択肢で、その勢いは侮れないでしょう。極右政党の生き残り戦略として3つ挙げら、1つ目はハイブリッドですね。有権者の不満は移民、難民の増加、インフレの長期化にある。フランス・国民連合、英国・右派ポピュリズム政党と言われているリフォームUKを見ても、2つの声にこたえるために移民や難民の排斥を訴えつつ、際限の裏付けが乏しい大規模減税や社会保障の充実などを打ち出してくるでしょう。ヨーロッパの世論調査では、インフレで生活費があがっていることを最大の問題に掲げている人が増えています。既成政党がうまく対応できていないところで、耳障りの良い政策に支持が集まる傾向にあると思います。そして、2つ目は脱悪魔化。イタリア・メローニ首相は極右政党のイタリアの同胞のイメージをやわらげる努力を重ねて、2022年に政権を奪取しました。移民や難民の排斥、ジェンダーや家族に関する伝統的な価値観は維持しますが、過激な言動は慎んでいます。EU、NATOに対する反発はいったん封印して、現実的な外交路線に転換しており、フランス・ルペン氏もこのような戦略を進めています。3つ目はSNS発信です。ドイツのための選択肢にはメローニ氏やルペン氏の様なスターはいない代わりに、TikTokを含めたSNSの発信を強化しています。極右が政権に近づいたり担うようになってくると、ヨーロッパ世界全体ではイタリア・メローニ首相のような現実路線に傾くのであれば良いですが、右政党が政権を奪取して独裁的な政治体制を強めたり、ロシアのような権威主義体制にすり寄ったりする懸念があります。極右政党が生き残りに知恵を絞るのであれば既成政党も進化する努力を続けるべきでしょう」などと話した。(日本経済新聞)