戦争を拡大させる人間の特性に歴史学の視点から迫る研究プロジェクトが始まっている。メンバーのジョージ・ブラウン大学ダニエル・ホイヤー博士らは15世紀以降3000回を超える戦争や紛争の死者数のデータを分析した。最も死亡率が高いのは第二次世界大戦、それに次いで死亡率が高かったのは三十年戦争でそれまでの戦争に比べて急激に死亡率が高くなっていた。伝統カトリック勢力とプロテスタント勢力が対立し、総死者数は800万人にのぼった。ホイヤー博士らは戦争に使われた活版印刷技術に注目した。プロテスタント勢力が活版印刷で大量に作ってばらまいたビラでは、カトリック勢力を魔物の姿で描き自分たちの勢力は神聖な集団として描いていた。敵への恐怖心を煽り仲間の結束心をかきたてるビラを両陣営が大量にばらまいた。「プロパガンダ」は元々教えの種をまくという意味のラテン語だったが、政治的な宣伝戦を表す言葉となった。ホイヤー博士らはプロパガンダが戦争を深刻化させた要因だと指摘している。マスメディアを使ったプロパガンダはその後も戦争を拡大する原動力となっていく。