2024年6月16日放送 2:30 - 3:19 NHK総合

NHKスペシャル
選 ヒューマンエイジ 第2集 戦争 なぜ殺し合うのか

出演者
鈴木亮平 久保田祐佳 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

なぜ戦争を繰り返すのか?「人間の本性」の謎に迫る

人類と戦争の関わりを解き明かすために番組は戦争・紛争の記録を可視化した。過去3500年間で少なくとも1万回、総死者数は1億人5千万人にものぼることがわかった。人はなぜ戦争を繰り返すのかに迫る。

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バフムト(ウクライナ)幕張(千葉)
ヒューマンエイジ 人間の時代 第2集 戦争 なぜ殺し合うのか

過去3500年間の文献に残る戦争・紛争などのデータを可視化した。記録に残る最も古い戦争はエジプトで起きたメギドの戦い。15世紀からは死者数のデータが加わり、15世紀は約70万人、16世紀は約252万人、17世紀は約1327万人、18世紀は約819万人、19世紀は約1813人、20世紀は1億約652万人。

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アメリカエジプトメギドの戦い南北戦争
最新の人類学から見えた 人間と戦争の「意外な原点」

大英博物館には人間が大規模集団で戦った世界最古の証拠がある。1万3000年以上前の人骨に無数の傷がついていた。人骨はジェベルサハバ遺跡で61体発掘され、6割に同じような傷がついていた。5歳に満たない子どもの大腿骨とみられる骨の根本には飛び道具によってつけられた傷が確認された。1人に向けて矢や槍が何本も投げつけられていた例もあり、1万3000年以上前から人間は飛び道具を使って殺戮を始めていた。人間の遠い祖先であるアウストラロピテクス・アファレンシスは数十人程度の集団で虫や植物を食べて生活するか弱い生き物だった。人類は他者への共感を高める作用があるオキシトシンが重要な働きを担うようになり、人類はこのオキシトシンによって生き延びてきたが、飛び道具の誕生によって立場が一変する。5万年前に祖先が暮らしていたマンドラン洞窟からは大量の矢じりが見つかった。大型動物の骨も数多く見つかっている。

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イギリスオキシトシンサットン・フーの兜ジェベルサハバ遺跡スーダンフランス国立科学研究センターホア・ハカナナイアマンドラン洞窟ラメセス2世像ロゼッタストーン大英博物館
人間を戦争に駆り立てる!”飛び道具”の恐ろしい魔力

人類はオキシトシンによって次第に集団の規模を拡大し、新たな道具を発明できるようになった。その結果飛び道具が生み出され、異なる集団の間で起きた食べ物などの争いがきっかけとなり人間同士の大量殺戮が起きた。人間は飛び道具を進化させていき、今も人間は相手より強い飛び道具を生み出さずにはいられない衝動に駆られ続けている。距離が近いと相手への共感から攻撃するのにためらいを感じやすいが、飛び道具が進化し飛距離が伸びると相手への共感は弱まり攻撃への抵抗感が失われていくと考えられる。

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V2ロケットオキシトシンフランス国立科学研究センター大陸間弾道ミサイル
人類学×エジプト考古学 人間が戦争をする理由とは/人間を戦争に駆り立てる?”心の弱点”があなたにも?

総合地球環境学研究所の山極所長は狩猟のために使われた飛び道具を人間に向けたのは何か特別な理由があった、農耕や定住が始まり別の集団との間で敵対意識が高まったのかもしれないなどと指摘した。名古屋大学の河江准教授は国境の概念ができ始め隣の国に新たなものを求めていくと戦争がとたんに増えていくなどと指摘した。番組は死のリスクを冒しても戦争を起こす人間の心理に迫るため、人間と戦争・紛争に関連する4万本にのぼる研究論文を読み解いた。

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名古屋大学総合地球環境学研究所
人間を戦争に駆り立てる?”心の弱点”があなたにも?

人間は戦争に突き進む謎を探るため、番組は全論文解読システムを活用。膨大な研究論文の中から戦争、紛争、暴力などに関するものを抽出して読み解き、研究者が高い関心を寄せているテーマのランキングをはじき出した。すると第5位には協力性という言葉が入り、注目度1位の論文のタイトルには「オキシトシン」があった。最新研究から人間を戦争へと突き動かすオキシトシンの一面が見えてきた。それを突き止めたライデン大学のデ・ドリュー教授は「協力的にするだけでなく非常に攻撃的にする働きもある」と話した。ネズミの実験でオキシトシンの攻撃性を確かめた映像を伝えた。赤ちゃんを生みオキシトシンが分泌されている母ネズミに初対面のネズミを近づけると攻撃を仕掛けた。オキシトシンには守るべき相手とそうではない相手を線引し攻撃を促す作用もある。デ・ドリュー教授はオキシトシンの線引きする性質が人間でどう働くか確かめるため、オキシトシンのスプレーを鼻から吸った被験者に「トロッコ問題」と呼ばれる実験をやってもらった。暴走した列車が行く先にいる5人の作業員がおり、レバーを動かして進路を変えると5人は助かり違う線路の作業員1人が犠牲になるという実験で、デ・ドリュー教授はこのトロッコ問題の1人の作業員に「外国人の名前」と「自国民の名前」をつけた場合でこの1人を犠牲にする行動がどう変化するかを確かめた。オキシトシンを吸わない状態ではどちらの名前でも1人を犠牲にする傾向に違いはなかったが、オキシトシンを吸引すると自国民を犠牲にする傾向が減少し外国人の名前では増加した。オキシトシンの作用で外国人には線引きをして犠牲もやむを得ないと思う傾向が強められたと考えられる。

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オキシトシントロッコ問題ライデン大学ライデン(オランダ)
人間の”良心”が暴走!?戦争を拡大する「意外な技術」

戦争を拡大させる人間の特性に歴史学の視点から迫る研究プロジェクトが始まっている。メンバーのジョージ・ブラウン大学ダニエル・ホイヤー博士らは15世紀以降3000回を超える戦争や紛争の死者数のデータを分析した。最も死亡率が高いのは第二次世界大戦、それに次いで死亡率が高かったのは三十年戦争でそれまでの戦争に比べて急激に死亡率が高くなっていた。伝統カトリック勢力とプロテスタント勢力が対立し、総死者数は800万人にのぼった。ホイヤー博士らは戦争に使われた活版印刷技術に注目した。プロテスタント勢力が活版印刷で大量に作ってばらまいたビラでは、カトリック勢力を魔物の姿で描き自分たちの勢力は神聖な集団として描いていた。敵への恐怖心を煽り仲間の結束心をかきたてるビラを両陣営が大量にばらまいた。「プロパガンダ」は元々教えの種をまくという意味のラテン語だったが、政治的な宣伝戦を表す言葉となった。ホイヤー博士らはプロパガンダが戦争を深刻化させた要因だと指摘している。マスメディアを使ったプロパガンダはその後も戦争を拡大する原動力となっていく。

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ジョージ・ブラウン大学トロント(カナダ)リュッツェン(ドイツ)三十年戦争第二次世界大戦
人間は戦争をやめられる?”本能”を乗り越えるカギは/戦争を繰り返す人間 未来に希望をもたらすには?

NPO法人「REALs」の瀬谷理事長は南スーダンでもあらゆるレベルの争いがコミュニティで起きてるが共存できる仕組みを作ることは可能、南スーダンでは食料が足りないことが民族共通の課題なので食料の自給率を高める取り組みをする、協力したほうが生存率が上がる仕組みを作るなどと指摘した。山極所長は地球全体が結束しなければならない環境問題や気候問題がある、歴史的な対立を超えてみんなで解決していく方向に進ませることが戦争を起こさせない貴重な一歩になるなどと指摘した。人間は敵対心を高めてしまう心の特性を乗り越えようと模索し続けてきた。古代エジプトとヒッタイトが争ったカデシュの戦いでは約6万人が激突し両国ともに衰退するという危機に直面する中、世界初の和平条約が結ばれた。遺跡に刻まれた条文には線引きを乗り越えるルールが明文化されている。リベリア内戦で20万人以上が犠牲になったリベリア共和国では、市民が民族や宗教が異なる人達が同じ白いTシャツを着て反戦を訴える運動を始めた。2003年に停戦が成立し、線引きを乗り越えるために元兵士たちの職業訓練に取り組み始めた。多くの市民を奪った兵士を許し、国と立て直す仲間として受け入れた。河江准教授は戦争が起こった後にもう一度戻すシステムを作っていく努力をするべきだと話した。

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REALsエジプトカデシュの戦いカルナック神殿リベリア共和国南スーダン共和国
(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

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