宮城県沿岸で東日本大震災の被害に遭った佐藤さん(仮名)。災害公営住宅で暮らし、切り詰めた生活をしている。今の収入は2か月ごとに支給される10万円ほどの年金のみ。佐藤さんは自宅と経営していた食料品店を津波で流された。国から支援金を100万円。その他、義援金20万円を支給された。さらに生活再建の資金として頼ったのが“災害援護資金”。災害援護資金は年収220万円以下など所得が低い被災者に対する公的な貸付制度。信用調査はなく、6年間は返済が猶予されるなど被災者が利用しやすいのが特徴。上限額の350万円を借り入れた佐藤さんは店舗の再建に踏み出した。しかし、急速な人口流出という厳しい現実に突き当たる。結局、店舗の再建は叶わず、借りたお金は生活費に消えた。そうした中、自治体からの催促を受け始めた。佐藤さんはアルバイトもしたが、高血圧や心臓にも持病があり、続けられなかった。今は不眠症の薬も服用している。多くの被災者が返済に苦しむ災害援護資金、返還をめぐる訴訟が多発する事態になっている。仙台市は東日本大震災の後、約233億円を貸し付けたが、滞納額は約29億7000万円にのぼっている。その回収のため、2017年から新たに部署を立ち上げ、専門業者にも回収を委託している。返済の期限は13年、これまで全く返済がない被災者に対しては訴訟を起こさざるを得ない。訴訟の数は令和3年度から大幅に増加。累計で289件にのぼっている。
岩手県内で最多となる228件の貸し付けを行った釜石市。債権回収を担っているのが古川由憲さん。2年ほど前から被災者に対する訪問催促を始めた。貸付金は国と県が出資。市町村を通じて被災者に貸し付けられる。被災者からの回収は市町村が担うが、回収ができなかった場合、その分を肩代わりして国と県に返済しなければならない。市町村は被災者と国の間で板挟みになっている。古川由憲さんも津波で家を流された被災者。複雑な思いを抱えながら訪問を続けている。
災害援護資金に大きな問題があることは阪神・淡路大震災の頃から指摘されてきた。約1300億円の貸し付けが行われたが、滞納する被災者が続出し、自治体は500件を超える訴訟を起こした。制度の仕組みを変えられないかと活動してきた岩田伸彦さん。被災者を連れて国へ陳情にあがり、月1000円からの少額返済の制度を認めさせた。さらにどうしても返済が立ち行かない被災者には免除も可能となった。
少額返済や免除などの制度が適用される被災者は一部に限られている。現在、免除を求めている橋本さん(仮名)。津波で家を失い、災害援護資金を350万円借り入れ、月に4万円ほどの返済が必要だった。しかし、漁師の橋本さんは記録的な不漁にみまわれ、役場と交渉して月数千円の少額返済を認めてもらった。心臓に持病がある橋本さんは今の食事では病状が悪化すると医師に指摘された。免除が認められるのは借りた人が死亡した時、重度の障害を負った時、破産や再生手続きをした時などと定められている。この日、橋本さんは免除を直接訴えるため、町役場に向かった。話し合いは2時間に及んだ。町は橋本さんの状況に照らしても今すぐに免除はできないと回答したという。
岩手県内で最多となる228件の貸し付けを行った釜石市。債権回収を担っているのが古川由憲さん。2年ほど前から被災者に対する訪問催促を始めた。貸付金は国と県が出資。市町村を通じて被災者に貸し付けられる。被災者からの回収は市町村が担うが、回収ができなかった場合、その分を肩代わりして国と県に返済しなければならない。市町村は被災者と国の間で板挟みになっている。古川由憲さんも津波で家を流された被災者。複雑な思いを抱えながら訪問を続けている。
災害援護資金に大きな問題があることは阪神・淡路大震災の頃から指摘されてきた。約1300億円の貸し付けが行われたが、滞納する被災者が続出し、自治体は500件を超える訴訟を起こした。制度の仕組みを変えられないかと活動してきた岩田伸彦さん。被災者を連れて国へ陳情にあがり、月1000円からの少額返済の制度を認めさせた。さらにどうしても返済が立ち行かない被災者には免除も可能となった。
少額返済や免除などの制度が適用される被災者は一部に限られている。現在、免除を求めている橋本さん(仮名)。津波で家を失い、災害援護資金を350万円借り入れ、月に4万円ほどの返済が必要だった。しかし、漁師の橋本さんは記録的な不漁にみまわれ、役場と交渉して月数千円の少額返済を認めてもらった。心臓に持病がある橋本さんは今の食事では病状が悪化すると医師に指摘された。免除が認められるのは借りた人が死亡した時、重度の障害を負った時、破産や再生手続きをした時などと定められている。この日、橋本さんは免除を直接訴えるため、町役場に向かった。話し合いは2時間に及んだ。町は橋本さんの状況に照らしても今すぐに免除はできないと回答したという。