- 出演者
- 森下絵理香
オープニング映像。
薬には報告義務があるがサプリメントには報告義務がなく、今回報告が遅れた可能性がある。サプリメントに明確な定義はないが、消費者庁などの議論ではカプセルや錠剤、粉末や顆粒形態の健康食品としており、天然食品から成分を抽出したものなどととされている。成分を濃縮したものをすべて指すといった指摘もある。健康食品は特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品とこれらどれにも当てはまらないいわゆる「健康食品」の4つに分けられる。今回の紅麹の問題では混入とは別のリスクを指摘する声もある。国の研究班の調査ではサプリメントなどの健康食品が原因とみられる重い肝炎の報告があることがわかっている。特定のサプリが原因でなく飲んだ人の体調や体質との兼ね合いもあると考えられているが、通常の食品ではほとんどみられない。調査をした医師は人工的に作ったものは自然のものとは番うとサプリメント特有のリスクを指摘している。
先月東京で開かれたヘルスフードエキスポでは、今年初めて機能性表示食品を集めたエリアが設けられた。アベノミクスの規制緩和をきっかけに始められた機能性表示食品制度は、届け出さえすれば国の審査なく企業の責任で機能性の食品を可能として食品産業の活性化を図った。制度の設計に関わった森下氏は、制度には自らが必要なものを買えるという消費者のメリットにつなげる狙いもあったと話した。機能性表示食品の届け出の9割以上では機能性に関する論文を集め科学的根拠を評価した「研究レビュー」が使われている。コストのかかる臨床試験などを自社で行うことなく届け出を進めることができる。機能性表示食品の開発に取り組んでいたブレンド茶メーカー精茶百年本舗では、製品の完成が近づきパッケージをデザインしていた矢先に紅麹サプリの問題が発覚した。社長は簡単に取れるのも企業にとってはメリットがあるが、逆にそれがリスクになる可能性があると今回の事件で感じたと話した。取引先とともに自主的な試験などを行い、安全性を確認することにした。納得できない限りは届け出を見送る考えだという。コンサルタントの勝田氏は、行き過ぎた表示や広告を懸念していた。東京農業大学の上岡教授の研究では2022年に届け出があった研究レビューから無作為に40件を抽出し、16項目について国際的なガイドラインの基準と照らし合わせて検証した。すると信頼性が「極めて低い」とされた研究データが40件中38件にのぼった。医師の染小氏は表示の根拠とされる論文や使い方にも問題があると指摘した。染小医師が所属するグループが発表した研究では32の論文を調査した。そのうち少なくとも8件で結果が誇張され広告などに使われていた。日本健康・栄養食品協会は「届け出の科学的根拠の質の向上や広告表示で誤認を与えないための助言に引き続き取り組んで参ります」などとしている。
機能性表示食品制度ができる前は根拠や安全性についてほとんど情報がないサプリメントも少なくなかった。制度ができたことで根拠の提示が求められ、健康食品の品質が向上し業界全体の意識が高まったとの声もある。専門家が指摘する表示の問題は虚偽・誇大や優良誤認と、薬のように誤認させる表示という2つのパターン。大手ECサイトから40製品を選び、消費者庁で表示問題に取り組んでいた弁護士にみてもらったところ、40製品中11製品が景品表示法、うち2製品が薬機法でそれぞれ問題となる可能性があることがわかった。「身長が伸びるのを飛躍的にサポート」といった優良誤認表示や「腹部全ての脂肪を落とす」といったはみだし表示などが見られた。紅麹問題を受け、政府は事業者に健康被害の報告を義務づけるなどの方針を示し、機能性表示食品に限らずサプリメント形状の食品全般の規制のあり方についても今後の検討課題とされた。サプリメントの原料などを製造している静岡の工場では、原料から製品まで規格通りに製造すること、健康被害が報告されたときに製造工程を遡って原因究明ができる体制作りが求められていた。そのため製造工程を全自動システム化して5年分の記録を保管している。
欧州食品安全機関では専門家が健康効果を強調する表示について厳しく評価している。審査には「対象成分が特定されているか」「表示したい効果が定義されているか」「根拠としている研究結果に妥当性があるか」という3つの基準がある。欧州食品安全機関が評価を行った申請は2324件、そのうち2062件に対して科学的根拠が不十分で承認できないとした。フランスでは健康被害の相談を受けた薬剤師は報告サイトから国に情報をあげる。ニュートリビジランスと呼ばれるシステムで報告を受けた食品環境労働衛生安全庁は、被害報告のあった製品に製造業者に聞き取りを行う。専門家チームと分析評価を行い、結果は監督省庁に報告し消費者や医療従事者などにも共有する。ダイエットサプリなどに含まれる成分「p-シネフリン」は心臓への影響が懸念されるとして、摂取量の上限が定められた。
EUやフランスではトクホや機能性表示食品などはないが、サプリメントについてはリスクがあるという前提で制度を作り安全性を担保しようとしている。アメリカは国民の7割がサプリを摂取しているがその分健康被害も多く、高校生用教材を配布するなど国は今サプリ教育に力を入れようとしている。
エンディングの挨拶。
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