国の特別天然記念物トキ。環境省は新潟県佐渡市以外で野生への復帰を目指してきた。そしてきのう専門家会議で来年6月ごろ本州で初めて石川県の能登地域で放鳥を行う方針が了承された。一度に15〜20羽ほどを複数年にわたって放鳥するという。かつて日本のほぼすべての地域で生息していたトキ。羽毛を取るための乱獲や農薬の多用によって餌となる生き物が減ったことで数が激減した。本州最後の生息地となったのが能登半島。1970年、最後の1羽となったトキを繁殖のため捕獲して新潟県の佐渡トキ保護センターに送られたが、翌年に急死。その後、日本の野生のトキは絶滅。1999年、中国からトキのつがいを譲り受け繁殖と放鳥を繰り返してきた。そして、佐渡の野生のトキは去年12月末時点の推定で576羽まで回復したという。放鳥地に選ばれた石川県。3年前から放鳥に向けた取り組みを進め、能登地域の9つの市と町にモデル地区を設定。餌場となる田んぼの農薬を減らすなど環境整備を行ってきた。しかし、去年の能登半島地震で水路が破損するなどして一部の地域で活動を中断せざるをえなくなった。そんな中でのトキの放鳥。復興のシンボルとして地域の活性化に結びつけたいとしている。本州で最後に野生のトキが確認された石川県穴水町。放鳥されたトキが生息しやすい環境作りに取り組んでいる。宮下源一郎さんは生物や希少な動物の調査を行う仕事に関わりながらトキのことを調べてきた。宮下さんは能登の空を羽ばたく姿を取り戻したいと3年前ボランティア団体を設立。本州最後のトキが捕獲された場所に餌場となる池を作るなど環境整備を行ってきた。また、地元の子どもたちに生態についても知ってもらおうと通学路でもあるトンネルの中に資料や写真を展示してきた。能登地域での具体的な放鳥場所はことし7月ごろまでに決め、仮設のケージで一定期間、ならしたあと放鳥されるという。