日本製鉄による米国の製鉄大手・USスチールの買収問題。根強い反対論が大統領選挙とも絡んで、先行きは不透明となっている。USスチールの地元、米国・ペンシルベニア州。1875年から稼働する製鉄所がある町では、「米国の誇り」の買収に反発も聞かれる。USスチールは業績不振で従業員も激減し、周辺は衰退。工場近くは空き家が目立ちかなり寂れた様子。買収による地域再生を期待する声もある。ピッツバーグ大学・クリスブリエム氏は「USスチールの従業員にとって最も重要なことは、誰が買収するにせよ、既存の工場にかなりの投資を行うこと」と述べた。日本製鉄は14億ドルの設備投資、社名や本社の所在地を変えず、工場も閉鎖しないことなどを表明。それでも従業員が加盟する労働組合は強く反対。さらに米国・トランプ前大統領は「日本製鉄がUSスチールを買収したら即座に阻止する」、バイデン大統領は「完全に米国企業であり続けるべき」と述べた。ペンシルベニアは11月の大統領選の激戦州。組合の票を得たい思惑が買収に立ちはだかる。日本政府関係者は「あまりにも時期が悪すぎた、大統領選が終わるまで動かないのではないか」。政治問題となったことで、米国政府による買収計画の審査が長期化する可能性も指摘されている。