トランプ大統領の関税政策の背景にはどのような民意が存在しているのか。その底流にある原動力や今後の行方を展望する。トランプ関税の根底には“アメリカ第一主義”があり、単なる通商手段にとどまらず国家主権と経済自立の象徴ととらえているようにみえる。この方針は不公平なグローバル化への国民の不満を吸い上げたもの。 また、トランプ大統領は関税を外交カードとしても使っている。関税を好むのは単独で即時実行できる点にあるとみられる。
トランプ政権の関税政策は国内経済に深刻な影響を及ぼしている。輸入コストの上昇は中小企業を直撃し、利益率低下が起これば倒産リスクを高める可能性もある。消費者にとっても商品値上げによるインフレが懸念される。それでもトランプ大統領は関税政策を断行。短期的な損失と引き換えに長期的な産業構造改革をはかる姿勢とも指摘されている。そうした関税政策に国際社会の反応は厳しいものがある。この関税政策の影響は一過性ではなく制度として定着する可能性も否定できない。
トランプ大統領の関税政策に対して米議会は一枚岩でななく、共和党内では自由貿易派と保護貿易派の対立が表面化している。トランプ大統領は4月9日、相互関税実施を90日間凍結し交渉の場を設けると表明したが政策撤回ではない。日本の、特に自動車・半導体・医薬品産業は25％の追加関税に直面している。メキシコ経由の輸出も見直しを迫られ、サプライチェーン全体の再構築が課題となっている。トランプ政権により、アメリカ抜きの秩序が現実みを帯びつつあるという指摘もある。日本には追従ではなく主体的通商戦略が求められる。